
うーんと、なんか最初から分かりませんでした。ちょっとだけ分かりません、ちょっとだけ。

OK、OK。じゃあこれ、まずどういう発想で解いていったらいいと思う?
これは、実際の授業で生徒と交わしたやりとりです。中3数学の二次方程式、しかも図形が絡む文章題ですね。紙を切って折って箱にする、という場面を想像するところから止まってしまう人はとても多いです。今回は、そこから式を立てて答えを出すまでを一緒にたどっていきます。そして最後に、この問題でいちばん落としやすい「解が2つ出たあと」の話をします。
先に動画で確認したい方はこちらからどうぞ。
今回の問題
横が縦よりも5cm長い長方形の紙があります。
この紙の四隅から、1辺が2cmの正方形を切り取ります。切り取ったあとに残った四方のふちを、90度に折り曲げて立ち上げます。すると、ふたのない直方体の箱ができます。
この箱の体積は100cm³でした。
もとの長方形の縦の長さは何cmですか。
まず、頭の中で紙を組み立ててみましょう。四隅の正方形を切り取ると、真ん中に大きな長方形が残り、その外側に細長い部分が4枚ぶら下がった形になります。この細長い部分を上に折り上げると、それが箱の壁になります。真ん中に残った長方形が箱の底面、折り上げた壁の高さが箱の高さです。
授業でも、ここで手を動かして図をかいてもらいました。「これが底面になって、高さがこうある感じ」と口に出しながら図に書き込むと、あとの式がずっと立てやすくなります。
この問題で使う道具は3つだけです。もとの紙の縦と横の関係、四隅から切り取る2cmという長さ、そしてできた箱の体積が100cm³という数字。この3つを図の上に並べてしまえば、あとは直方体の体積の公式に当てはめるだけになります。文章のままにらんでいても場面は見えてこないので、まずは絵にするところから始めましょう。
核になる考え方は「聞かれているものを文字で置く」
この生徒が最初に言ったのは、「縦をA、横をBと置いてみる」というものでした。発想としては悪くありません。ただ、この方針だと文字が2つに増えてしまいます。
文字が増えるほど、問題は解きにくくなります。
AとBの2つを置くと、AとBの関係式をもう1本用意しないと答えにたどりつけません。式が増えれば手数も増えて、途中で何を求めていたのか見失いやすくなります。だから前提として、文字はなるべく少なくする、と決めておきます。
では、その1つの文字を何に使うか。ここが2つ目のポイントです。
問題文で最後に聞かれているものを、文字で置く。
今回の問題文が聞いているのは「もとの長方形の縦の長さ」です。だから、もとの長方形の縦をxとおきます。
これは、他の文章題でもそのまま使えるやり方です。求めたいものをxとおいておけば、方程式を解いて出てきた値が、そのまま答えの候補になります。逆に、聞かれていないところをxとおいてしまうと、方程式を解いたあとに「ここから答えを出し直す」という工程がもう1つ増えます。この工程を忘れて、xの値をそのまま答えにしてしまうミスは、私がこれまで見てきた中でもよく起こります。
3ステップで解いていく
ステップ1: 縦をxとおいて、横をxで表す
もとの長方形の縦をxcmとおきます。
横は「縦よりも5cm長い」と問題文に書いてあります。ここで、生徒は最初「5x」と答えました。5cm長いのと5倍は別ものです。長いのは足し算、倍は掛け算ですね。
横の長さ = x + 5(cm)
ステップ2: 箱の縦・横・高さをxで表す
次に、できあがった箱の底面を見ます。
底面の縦は、もとの紙の縦から、上と下で2cmずつ切り取られています。上下あわせて4cm減るので、
底面の縦 = x − 4(cm)
底面の横も同じ考え方です。もとの紙の横はx+5cmで、左と右で2cmずつ切り取られています。
底面の横 = (x + 5) − 4 = x + 1(cm)
最後に高さです。折り上げた壁の高さは、切り取った正方形の1辺そのままなので2cmになります。
高さ = 2(cm)
直方体の体積は、縦×横×高さで求まります。底面の縦と横をかけると底面積が出て、それを高さの分だけ積み上げたものが体積、というイメージを持っておくと式が作りやすいです。
体積が100cm³なので、方程式はこうなります。
2(x − 4)(x + 1) = 100
ステップ3: 方程式を解く
ここで、いきなり展開したくなるところです。でもその前に、左辺の2に注目してみてください。
両辺とも2で割れます。
(x − 4)(x + 1) = 50
先に2で割っておくと、そのあとの数字がぐっと小さくなります。展開してから100を移項すると、途中で200や2x²といった大きな数を扱うことになるので、割れるときは先に割っておくのが得です。
では、左辺を展開します。
x² − 3x − 4 = 50
50を左辺に移項します。
x² − 3x − 54 = 0
二次方程式が出てきたら、まず因数分解を考えます。かけて−54、たして−3になる2つの数を探すと、−9と+6が見つかります。
(x − 9)(x + 6) = 0
かけ算の答えが0になるということは、どちらかが0だということです。
x − 9 = 0 のとき、x = 9
x + 6 = 0 のとき、x = −6
計算としては、ここまでで正解です。xの値は9と−6の2つが出てきました。
解が2つ出たら、答えの吟味をする
さて、ここが今回いちばん大事なところです。
授業でも、生徒はここで「x = 9と−6が答えでOKです」と言いました。計算に必死になっていると、出てきた数をそのまま答えとして書いてしまいます。気持ちはとてもよく分かります。
でも、ここで問題文に戻ります。
xとおいたのは何でしたか。もとの長方形の縦の長さでしたね。
長さが−6cm、というものは存在しません。
だから、x = −6は答えとしてふさわしくありません。答えは、
縦の長さ = 9cm
もう少しきちんと言うと、xには最初から条件がついています。上下で2cmずつ切り取るので、もとの紙の縦が4cm以下だと、そもそも正方形を切り取れません。つまり、
x > 4
この条件で見ても、x = −6は外れます。x = 9だけが残ります。
出た答えを問題に戻して確かめてみましょう。縦が9cmなら横は14cmです。四隅を切り取ったあとの底面は、縦が9−4で5cm、横が14−4で10cm、高さが2cmです。
5 × 10 × 2 = 100
体積がきちんと100cm³になりました。答えを問題文に戻して、数字が合うところまで確かめる。これが二次方程式の文章題での検算です。
二次方程式の文章題は、解が2つ出てどちらか一方だけが正解、というパターンが本当によく出ます。 今回のように、片方が負の数になって長さとして成り立たないケース。あるいは、x = 3 ± √5 のような形で出てきて、プラスの方だけが条件に合うケース。答えを書く前に「この値は問題の場面としてありえるか」を確かめる習慣をつけておくと、取りこぼしが減ります。
よくあるつまずき
つまずき1: 文字を2つ置いてしまう
縦をA、横をBと置く。発想は自然ですが、文字が2つになると式ももう1本必要になります。まずは、問題文の最後で聞かれているものだけを文字で置く。これだけで、立てる式が1本にまとまります。
つまずき2: 「5cm長い」を「5倍」と読んでしまう
授業でも実際に出た間違いです。「横が縦よりも5cm長い」は足し算なので、x + 5です。5xと書いてしまうと、そこから先の計算がすべてずれます。文章題では、「長い」「多い」は足し算、「倍」は掛け算、と読み分けるところに毎回立ち止まってください。
つまずき3: 底面の長さから引く数を間違える
切り取るのは1辺2cmの正方形ですが、引くのは2ではなく4です。縦なら上と下、横なら左と右で、それぞれ2cmずつ切られているからです。図に2cmと2cmを書き込んでから引き算をすると、間違いにくくなります。問題文の数字は、図に書き込んでから使うのがおすすめです。
つまずき4: 解を2つとも答えにしてしまう
今回の主役のつまずきです。二次方程式を解いたら、方程式としての答えは確かに2つあります。でも、問題が聞いているのは「長さ」です。方程式の答えと、文章題の答えは別ものだと思っておいてください。
よくある質問
Q. なぜ先に両辺を2で割るのですか?
A. 展開したあとに出てくる数字を小さくするためです。2をつけたまま展開すると2x²や200が出てきて、そのあとの因数分解も手間が増えます。割り切れるときに先に割っておくと、計算ミスが減ります。もちろん、先に展開してから両辺を2で割っても答えは同じです。
Q. 因数分解ができないときはどうすればいいですか?
A. 解の公式を使います。ただし、そのときも今回と同じで、出てきた2つの解を問題文に戻して吟味する工程は変わりません。√を含む答えが出てきたときこそ、片方だけが正解というパターンが多くなります。
Q. x > 4 という条件は、答案に書いた方がいいですか?
A. 学校や問題の指示によりますが、書いておくと安全です。「長さは正の数だから」だけでも通ることは多いです。ただ、今回のように「切り取れるかどうか」まで踏み込んだ条件が問われる問題もあるので、なぜその解を捨てたのかを一言そえる練習をしておくといいと思います。
Q. 横の長さも答えに書きますか?
A. 今回の問題が聞いているのは縦の長さだけなので、答えは9cmです。ただ、検算のために横が14cmだと出しておくのは役に立ちます。
今回のポイントまとめ
- 文字はなるべく少なくする。2つ置くと式がもう1本必要になる
- 問題文で最後に聞かれているものを文字で置く
- 図に数字を書き込んでから、底面の縦と横を求める
- 割り切れるときは、展開の前に両辺を割っておく
- 解が2つ出たら、問題文に戻して条件に合う方を選ぶ
もっと詳しく見たい人は、実際の解説動画も参考にしてください。図に書き込みながら式を立てていく手順を、そのまま追いかけられます。
二次方程式の文章題は、式を立てるところと答えを吟味するところの2つが山場です。分からない問題があれば、公式LINEで気軽に質問してくださいね。写真を送ってもらえれば、その問題に直接お答えします。
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