
この問題、何をするか分かりませんでした。

正直でいいね。じつはこの問題、解き方が3つ用意されているんだ。どれを使っても同じ答えになる。今日はその3つを全部やって、最後に「自分はどれが楽だったか」まで決めてもらうよ。
先に動画で確認したい方はこちらからどうぞ。
今回の問題
今回いっしょに考えるのは、この問題です。
方程式 (x−4)²−25=0 を、次の3通りの方法で解きなさい。
ア 因数分解による解き方 イ 平方根の考えによる解き方 ウ 解の公式による解き方
また、あなたにとって、どの方法が最も解きやすかったか、記号で答えなさい。
中3数学の「二次方程式」に出てくる問題です。ふつうの問題は「解きなさい」だけですが、この問題は解き方まで指定されているところが違います。しかも最後に「どれが解きやすかったか」を自分で選んで答える、という変わった問い方までついています。
動画に出てくれた生徒さんは、この問題を見て「何をするか分かりませんでした」と言いました。計算ができないわけではありません。実際、このあとの展開も因数分解も、ヒントを1つもらえば自分で進められています。止まっていたのは、3つの解き方が並んでいるのを見て、どこから手をつけるかが決まらなかったところです。
ここは多くの中3生が同じところでつまずきます。だからこの記事では、3つの解き方を1つずつ、同じ式でならべて確かめていきます。
考え方の核: 同じ式でも、入り口は1つではない
二次方程式の解き方は、中3で3種類ならいます。
- 因数分解: ( )( )=0 の形にして、かけて0になる組を探す
- 平方根の考え: ( )²=数 の形にして、ルートを外す
- 解の公式: ax²+bx+c=0 にそろえて、公式に代入する
どれも「xを求める」という目的は同じです。違うのは入り口だけです。
そして大事なのは、どれで解いても答えは同じということ。今回の問題は、その事実をわざと確かめさせる問題です。3通りで解いてみて、全部同じ答えになったら「ああ、本当にどれでもいいんだ」と体で分かる。そういうつくりになっています。
先生も動画の中でこう言っています。「数学っていろんな解き方があって、簡単な解き方を選んでいかないと時間内に終わらないよね」。つまりこの問題のねらいは、計算力ではなく解き方を選ぶ練習です。
では順番に見ていきます。動画では ア → ウ → イ の順で解いていますが、ここでは問題の並びどおり ア → イ → ウ で書きます。
ステップ1: ア 展開してから因数分解する
まず、(x−4)² を展開します。
(x−4)² − 25 = x² − 8x + 16 − 25
16 − 25 は −9 なので、
x² − 8x − 9 = 0
ここまでくれば、見なれた形です。あとは因数分解します。さがすのは、かけて −9、たして −8 になる2つの数です。
動画の生徒さんは、ここで「8と1?」と答えました。惜しいところまで来ています。かけて9になる組は 9 と 1 で合っていますが、たして −8 にするには、どちらかにマイナスをつける必要があります。−9 と +1 なら、かけて −9、たして −8。これで条件がそろいます。
(x − 9)(x + 1) = 0
かけて0になるのは、どちらかが0のときだけです。だから
x − 9 = 0 または x + 1 = 0
x = 9、−1
これがアの答えです。展開してから因数分解する、という2段構えの解き方でした。
ステップ2: イ 平方根の考えで解く
つぎはイです。こちらは展開しません。
もとの式をもう一度見てみます。
(x − 4)² − 25 = 0
−25 を右辺に移項します。
(x − 4)² = 25
ここで、25 は何の2乗かを考えます。5² です。つまり、
(x − 4)² = 5²
左も右も2乗の形になりました。両辺が2乗なら、平方根を考えて外せます。
x − 4 = ±5
ここで ± を書き忘れない ことが最大のポイントです。2乗して25になる数は、5だけでなく −5 もあるからです。
あとは −4 を移項して、
x = 4 ± 5
4 + 5 = 9、4 − 5 = −1 なので、
x = 9、−1
アと同じ答えになりました。しかも、展開も因数分解もしていません。式の形が ( )²=数 になっている問題では、この解き方がいちばん短くなります。
ステップ3: ウ 解の公式に代入する
最後はウです。解の公式は、どんな二次方程式にも使えるかわりに、式を ax²+bx+c=0 の形にそろえてからでないと使えません。
だから入り口はアと同じ、まず展開します。
x² − 8x − 9 = 0
この式を ax²+bx+c=0 と見比べると、
- a = 1(x²の係数)
- b = −8(xの係数)
- c = −9(xがついていない数)
です。符号ごと写すこと。ここでbを 8 にしてしまうと、この先が全部ずれます。
解の公式は、こうでした。
x = 2a分の −b ± √(b² − 4ac)
代入します。
x = (2×1)分の 8 ± √((−8)² − 4×1×(−9))
中身を計算します。(−8)² は 64。−4×1×(−9) は +36。だから
x = 2分の 8 ± √(64 + 36) = 2分の 8 ± √100
√100 は 10 なので、
x = 2分の 8 ± 10
ここから2つに分かれます。
- たすほう: 2分の (8 + 10) = 2分の18 = 9
- ひくほう: 2分の (8 − 10) = 2分の(−2) = −1
x = 9、−1
3通りとも、答えは x = 9、−1 でそろいました。
答えの確かめと、どれを選ぶか
3つそろったところで、確かめをしておきます。x = 9 をもとの式に入れてみます。
(9 − 4)² − 25 = 5² − 25 = 25 − 25 = 0
x = −1 でも、
(−1 − 4)² − 25 = (−5)² − 25 = 25 − 25 = 0
どちらも0になりました。答えは合っています。
さて、この問題の最後の問い「どの方法が最も解きやすかったか」です。動画の生徒さんは「ア」と答えました。これは正解です。この問いには決まった正解がなく、自分が解きやすかった記号を書けばそれで丸になります。「アです」と書いてバツになることはありません。
ただ、覚えておくと得なことが1つあります。今回のように、もとの式が最初から ( )² − 数 の形をしている問題は、イ(平方根の考え)がいちばん速いと言われがちです。展開も因数分解もせず、移項して根号を外すだけで終わるからです。
つまり、こういうことです。
- 解き方はどれを選んでもよい(答えは同じ)
- ただし、式の形によって手間の少ない入り口がある
- テストで時間が足りなくなる人ほど、この「入り口選び」で差がつく
よくあるつまずき
- 平方根の考えで ± を書き忘れる。いちばん多いミスです。x − 4 = 5 だけ書くと、答えが x = 9 の1つになってしまいます。2乗して25になる数は 5 と −5 の2つ、と口に出して確認してから外しましょう
- 解の公式に代入するとき、符号を落とす。b = −8、c = −9 のようにマイナスごと写します。b を 8 にすると −b が −8 になり、答えが別物になります
- (x−4)² を x² − 16 と展開してしまう。(x−4)² は (x−4)(x−4) なので、x² − 8x + 16 です。まん中の項(−8x)を落とさない
- 因数分解で、かけて9になる組までは出せるのに符号を決められない。「かけて −9」はマイナスが1つだけ入る印、「たして −8」は大きいほうがマイナスだという印です。−9 と +1 で両方そろいます
- 3通りぜんぶ解いたのに、最後の「どの方法が解きやすかったか」を書き忘れる。記号で答えなさいと書いてあるので、ア・イ・ウのどれかを必ず書きます
- 解の公式の分母を 2 と書いてしまう。分母は 2a です。今回は a = 1 だからたまたま 2 になっているだけで、a が 2 や 3 の問題では変わります
FAQ
Q. 3通りの解き方は、全部覚えないといけませんか?
A. テストで指定されることがあるので、3つとも手順は追えるようにしておくのが安全です。ただし、ふだんの問題で最初に試すのは因数分解で構いません。因数分解できないときの保険が解の公式、( )²の形が見えたときの近道が平方根の考え、という位置づけで覚えると整理しやすくなります。
Q. 解の公式を忘れてしまいました。導き方から覚えるべきですか?
A. 動画の生徒さんも「覚えてません」と言っていました。まずは暗記で構いません。先生も「これ暗記だ」と言っています。x = 2a分の −b ± √(b² − 4ac) を、声に出して何度か言ってみてください。導き方(平方完成)は、暗記したあとで意味づけとして知れば十分です。
Q. どの解き方を選んでも、テストで点はもらえますか?
A. 解き方が指定されていない問題なら、どれで解いても正解です。今回のように「アの方法で」と指定されている場合だけ、その方法で解く必要があります。最後の「どれが解きやすかったか」の問いは、自分の答えを書けば正解です。
Q. 平方根の考えが使えるのは、どんな形のときですか?
A. ( )² = 数 の形に持っていけるときです。今回のように最初から (x−4)² がある問題はもちろん、x² = 16 のように x²だけの問題もこの仲間です。逆に x² − 3x − 10 = 0 のように x の項があるものは、そのままでは ( )² にできないので、因数分解か解の公式になります。
まとめ
(x−4)²−25=0 は、因数分解でも、平方根の考えでも、解の公式でも解けます。そして答えはどれも x = 9、−1 です。
「何をするか分からない」で手が止まったときは、解き方を知らないのではなく、どれを選ぶかを決めていないことがほとんどです。今回の問題は、その選び方を練習するために、わざと3通りを並べてくれています。
3つとも解いてみて、自分が速かった入り口を覚えておく。それだけで、次に同じ形が出たときに手が止まらなくなります。
この問題のポイント
- 二次方程式の入り口は3つ。因数分解/平方根の考え/解の公式
- どれで解いても答えは同じ。今回は3通りとも x = 9、−1
- ( )² − 数 の形が見えたら、平方根の考えがいちばん短い
- 平方根の考えでは ± を必ず書く。2乗して25になるのは 5 と −5
- 解の公式は ax²+bx+c=0 にそろえてから。a=1、b=−8、c=−9 を符号ごと写す
- 最後の「どの方法が解きやすかったか」は、自分の答えを書けば正解
二次方程式で、どの解き方を選べばいいか分からない。解の公式は知っているのに、因数分解や平方根の考えが出てこない。そんなつまずきは、Laf先生の公式LINEから気軽に質問してください。今回の生徒さんのように、計算はできるのに入り口で止まっている人は、とても多いです。
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