
3つの辺の長さが書いてある問題はコンパスで描けました。でも次の問題に60°って書いてあって、そこは分度器を使っちゃったんですけど、それで合ってますか?

3辺の問題が描けているなら、力はもう十分あるよ。60°も、じつは同じコンパス1本で作れる。今日はその作り方と、なぜそれで60°になるのかを一緒に確かめていこう。
先に動画で確認したい方はこちらからどうぞ。
今回の問題
今回いっしょに考えるのは、この問題です。
次のような△ABCをかきなさい。(2) AB=5cm、BC=4cm、∠B=60°
中1数学の「平面図形」に出てくる、三角形の作図の問題です。多くの問題集では、(1)で「AB=3cm、BC=5cm、CA=4cm」のように3つの辺の長さだけが与えられ、(2)でこの問題のように2つの辺と、そのあいだの角が与えられます。
(1)のほうは、多くの人ができます。底辺を1本引いて、両はしから決まった長さの円弧を描いて、交わったところが残りの頂点。これでおしまいです。今回の生徒さんも、(1)はきちんと描けていました。
つまずいたのは(2)です。「60°」という角度が出てきた瞬間に、分度器を取り出して測ってしまった。気持ちはとてもよく分かります。でも作図の問題は、定規(まっすぐな線を引く道具)とコンパスだけで図をかくというルールの問題です。分度器で測った角は、作図の答えとして認められません。
つまり今回のテーマはひとつだけ。コンパスだけで60°の角をどう作るか。ここさえ作れれば、あとは(1)と同じ作業です。
ちなみに、この生徒さんは最初にもうひとつ質問をしていました。「BCが底辺でないといけないのか分からない」。答えは、どの辺を底辺にしても正解です。底辺は見る向きによって変わるだけのものなので、そこにこだわる必要はありません。今回は∠Bが指定されているので、Bを角の頂点に置ける向き、つまりBCを下に置くのがいちばん楽になります。
考え方の核: 60°は「自分ですでに知っている三角形」からもらう
コンパスは、長さを写す道具です。角度を測る機能はありません。では、どうやって角度を作るのか。
答えは、角度がはじめから決まっている図形を描いて、その角をそのまま借りるです。
ここで思い出してほしいのが、小学校から知っている図形です。3つの辺の長さがすべて等しい三角形、つまり正三角形。この三角形の3つの角は、どれも同じ大きさになります。三角形の内角の和は180°なので、
180° ÷ 3 = 60°
正三角形の角は、必ず60°です。測らなくても、そうなると決まっています。
そして正三角形は、コンパスだけで描けます。長さが同じ辺を3本作ればいいので、コンパスで同じ半径の円弧を2回描くだけで作れてしまいます。
動画の中でも先生が「コンパス使って60°の作り方ってパッと思いつく?」と聞いたら、生徒さんが「正三角形を作る?」と自分で答えていました。知識としては、すでに持っていたわけです。足りなかったのは、角度を作りたいときに正三角形を思い出すという結びつきだけでした。
今回の問題では、この正三角形をBCの上に作ります。BCは4cmなので、4cm×4cm×4cmの正三角形を作れば、Bのところの角がぴったり60°になります。あとはその角の向きに線をのばして、その線の上で「Bから5cm」の場所を見つければ、それが点Aです。
やることを先にまとめておきます。
- BCを4cmで引く
- 4cmの円弧を2回描いて、正三角形の頂点を見つける(=60°の線ができる)
- Bから5cmの円弧を描いて、60°の線との交点をAにする。AとCを結ぶ
ステップ1: BCを4cmで引く
まず、定規でBCを引きます。長さは4cmです。左はしをB、右はしをCとしておきましょう。
ここでコツがあります。Aを置きたい側を空けておくことです。今回はBCの上側にAを置くので、紙の下のほうにBCを引いておくと、あとで円弧を描く場所が足りなくなりません。
動画でも先生が「Aは上に置こうかなっていうイメージからスタートして、BC底辺で置くじゃん?」と言いながら描き始めていました。最初に完成形をざっくり想像してから線を引くと、紙からはみ出す失敗が減ります。
なぜBCから引くのかというと、角の頂点であるBと、長さの決まっているBCが同時に決まるからです。∠Bを作るには、角の頂点Bと、角の片方の辺(BC)が先に必要になります。この2つがそろって初めて、「そこから60°」を作れます。
この時点で分かっているのは、BとCの位置だけ。Aはまだどこにも決まっていません。
ステップ2: 4cmの円弧を2回描いて、60°の線を作る
ここが今回のいちばん大事なところです。コンパスの幅を、BCと同じ4cmに合わせます。
そのまま、2回円弧を描きます。
- コンパスの針をBに刺して、BCの上側にふわっと円弧を描く
- 次に針をCに刺して、同じ4cmのまま、さっきの円弧と交わるように円弧を描く
2つの円弧がぶつかったところに、点ができます。この点を、ここでは仮にPと呼びます。
このPが何者かを確かめてみましょう。
- BP=4cm(Bを中心に4cmで描いた円弧の上にあるから)
- CP=4cm(Cを中心に4cmで描いた円弧の上にあるから)
- BC=4cm(ステップ1で引いたから)
3つの辺がすべて4cm。つまり、△BCPは正三角形です。動画で先生が「4cm×4cm×4cmの正三角形描けるの分かる?」と確認していたのが、この場面です。
正三角形の角はすべて60°なので、∠PBC=60°。測らなくても、そうなっています。
そこで、BとPを結んで、そのまままっすぐ先までのばして線を引きます(Pで止めずに、上に長めに引いておきます)。この線とBCがはさむ角が、ちょうど60°の角です。これで「60°の辺」が手に入りました。
ここで1つ、大事な注意です。このPは、求める三角形の頂点Aではありません。Pはあくまで、60°の向きを決めるために置いた仮の点です。動画でも先生が「だからここのAは関係ないのよ」と念を押していました。Pは通り道の目印で、Aはこのあと別に決めます。
ステップ3: 5cmの円弧で点Aを決めて、ACを結ぶ
60°の線が引けたので、あとは(1)の問題と同じ作業です。
今度はコンパスの幅を、ABの長さと同じ5cmに開きます。針をBに刺して、ステップ2で引いた60°の線と交わるように円弧を描きます。
円弧と線がぶつかったところ、そこが点Aです。
なぜそこがAになるのか、理由を確かめておきます。
- Aは60°の線の上にある → だから∠ABC=60°
- AはBを中心とする半径5cmの円弧の上にある → だからAB=5cm
「60°の線の上」と「Bから5cmのところ」の両方を同時に満たす点は、この交点しかありません。動画で先生が「60°のラインと5cmの半円がぶつかるところがAになると思わない?」と聞いていたのは、この2つの条件が重なる1点を指していました。
最後に、定規でAとCを結びます。これで、
- AB=5cm
- BC=4cm
- ∠B=60°
の△ABCが完成です。
仕上げでもう1つ。描いた円弧は消さないでください。作図の問題では、どうやって作ったかの跡(作図に使った線)も答えの一部です。消してしまうと、分度器で測ったのか正三角形で作ったのかが採点する人に分かりません。うすく残しておけば十分です。
検算: 作図の吟味
計算問題と違って、作図には「答えの数」がありません。そのかわり、作った図が条件どおりかを測って確かめることができます。3つ確認しましょう。
1つ目は、長さの確認です。
| 測るところ | あるべき長さ | どうやって作ったか |
|---|---|---|
| BC | 4cm | ステップ1で定規で引いた |
| AB | 5cm | ステップ3の円弧の半径 |
| BP・CP(仮の点) | どちらも4cm | ステップ2の円弧の半径 |
定規で当ててみて、ABが5cmになっていなければ、コンパスの幅がずれたか、円弧と線の交点を読み違えています。よくあるのは、コンパスの足が作図中に少し開いてしまうパターンです。
2つ目は、角度の確認です。ここで初めて分度器を使ってかまいません。作図の道具としてではなく、あとから確かめる道具として使うぶんには問題ありません。∠Bを測って60°の前後1°くらいに入っていればOKです。もし55°や65°になっていたら、正三角形の3辺が同じ長さになっていない、つまりステップ2で円弧の半径を変えてしまった可能性が高いです。
3つ目は、ACの長さです。じつは、AB=5cm、BC=4cm、∠B=60°が決まると、残りのACの長さも自動的に決まります。正しく作図できていれば、ACはおよそ4.6cmになります(中学の範囲を超えた計算で求めると、ちょうど√21cmです。数を知っておく必要はありません)。定規で測って4.5〜4.7cmくらいに入っていれば、作図はほぼ正確です。
ここで「ACが5cmを超えている」「4cmより短い」という場合は、どこかがずれています。だいたいはコンパスの幅か、60°の線の引き方です。
ACが約4.6cmと決まってしまうというのは、じつはとても大事なことです。2つの辺とそのあいだの角が決まれば、三角形はただ1つに決まる。だから、この問題の答えの三角形は、向きや位置が違っても形と大きさは全員同じになります。友だちの図と重ねてぴったり合えば、どちらも正解です。
よくあるつまずき
- 角度が出てきた瞬間に分度器を使ってしまう。今回の生徒さんがつまずいた場所です。作図の問題は定規とコンパスだけで解くルールなので、分度器で測った角は正解になりません。「60°と書いてあったら正三角形」と結びつけて覚えましょう
- 正三角形の頂点Pを、そのまま点Aだと思ってしまう。Pは60°の向きを決めるための仮の点です。Aはこのあと、Bから5cmの円弧との交点として決めます。BP=4cmなので、PをAにしてしまうとAB=4cmになり、条件に合いません
- ステップ2で、2つの円弧の半径を変えてしまう。BからもCからも同じ4cmで描くから正三角形になります。片方を3cm、もう片方を4cmで描くと、辺の長さがそろわず60°になりません
- BとPを結ぶ線を、Pのところで止めてしまう。Aは正三角形の外側、Bから5cmのところにあります。線を短く引くと5cmの円弧と交わらないので、Pを通り越して長めに引いておきましょう
- 作図に使った円弧をきれいに消してしまう。作図の跡は答えの一部です。うすくてもいいので残しておきます
- 角の頂点ではないところに角度を作ってしまう。∠Bと書いてあるので、60°の角を作る場所は点Bです。Cのところに60°を作ってしまうと、まったく別の三角形になります
FAQ
Q. 作図の問題で、分度器を使ってはいけないのはなぜですか?
A. 作図とは「定規とコンパスだけを使って図をかくこと」と決まっているからです。定規は、2点を通るまっすぐな線を引くためだけに使い、目もりで長さを測るためには使いません(辺の長さは、コンパスで写し取ります)。ルールがそう決まっている以上、分度器で測った角は作図の答えになりません。ただし、かき終わったあとの確認として分度器を当てるのは自由です。
Q. なぜ正三角形を描くと、ぴったり60°になるのですか?
A. 三角形の3つの角を合わせると180°になります。正三角形は3つの辺の長さが等しいので、3つの角も等しくなります。同じ大きさの角が3つで180°なのだから、1つぶんは180÷3で60°です。測ったから60°なのではなく、正三角形である以上そうなるしかない、というのがポイントです。だからコンパスで3辺を同じ長さにしさえすれば、角は自動的に60°になります。
Q. 30°や90°の作図はどうすればいいですか?
A. 同じ考え方で作れます。90°は、直線の上に垂直な線を立てる作図(垂線の作図)で作ります。45°は、その90°を半分に折る作図(角の二等分線)で作ります。30°は、今回作った60°を角の二等分線で半分にすれば作れます。まず作れる角を作って、それを半分にしていくのが基本の流れです。作図でよく出るのは60°・90°・45°・30°なので、この4つを結びつけて覚えておくと困りません。
Q. Aを下側に描いてしまいました。これは不正解ですか?
A. 正解です。∠B=60°という条件は、BCの上側でも下側でも同じように満たせます。紙の向きを変えれば重なるので、同じ三角形です。同じように、BCを底辺にせずABを底辺にして描いても正解です。動画でも先生が「底辺って見方によって変わるでしょ」と言っていました。大事なのは向きではなく、3つの条件(AB=5cm、BC=4cm、∠B=60°)を作図で満たしているかです。
まとめ
60°の作図は、分度器ではなくコンパスで作ります。作りたい角の場所に正三角形を1つ描いて、その角をそのまま借りるだけです。今回の問題なら、BCを4cmで引き、BとCから同じ4cmの円弧を描いて交点を出し、Bからその交点を通る線をのばす。これで60°の線が完成します。あとはBから5cmの円弧を描いて交点をAにし、ACを結べば終わりです。
角度が出てくると身がまえてしまいますが、やっていることは(1)の3辺の問題とほとんど同じ、円弧を描いて交点を取る作業です。「60°と言われたら正三角形」。これだけ持っておけば、作図で手が止まることはぐっと減ります。
この問題のポイント
- 作図は定規とコンパスだけで解く。角度が出てきても分度器は使わない
- 60°を作りたいときは、正三角形を1つ描いてその角を借りる
- 正三角形の角が60°なのは、内角の和180°を3等分するから(測る必要がない)
- BCが4cmなら、BとCから同じ4cmの円弧を描くだけで正三角形の頂点が出る
- その頂点は仮の点。求める点Aは、Bから5cmの円弧と60°の線の交点
- 作図に使った円弧は消さない。作った跡も答えの一部
角度が出てくる作図で手が止まる。円弧をどこから描けばいいか分からない。そんなつまずきは、Laf先生の公式LINEから気軽に質問してください。今回の生徒さんのように、3辺の作図はできるのに角度で止まっている人は、とても多いです。
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