一次関数の三角形の面積比を聞かれると、まず2つの三角形の面積を出しにいってしまう。中2から高校入試まで、いちばん多いつまずき方です。

面積比って書いてあるので、△ABCの面積と△ACDの面積をそれぞれ出そうとしたんですけど、底辺が斜めで高さが分からなくて、そこで止まりました。

その止まり方、正しい場所で止まってるよ。じつはこの問題、面積を1つも計算しないで答えが出るんだ。三角形の面積の公式を思い出しながら、「何が共通か」を先に探しにいこうか。
この記事では、直線の式を求めるところから、点Dの座標、そして面積比までを順番に説明します。最後に実際の面積でも検算します。
先に動画で確認したい方はこちらからどうぞ。
今回の問題
今回考えるのは、高校入試で実際に出題された問題(草苑女高)です。
> 直線 y=2x+4 と、2つの直線 l, m がある。y=2x+4 と直線lの交点をA、y=2x+4 と直線mの交点をB、直線lと直線mの交点をCとする。点Aはy軸上の点、点Bのx座標は -3、点Cの座標は (2, 0) である。
> (1) 直線lの式を求めなさい。
> (2) 直線mの式を求めなさい。
> (3) 点Cを通り、傾きが -2/3 の直線が直線ABと交わる点をDとする。このとき、△ABCと△ACDの面積比を求めなさい。
直線が3本、点が4つ。図がないと何がどこにあるのか分からなくなる形です。まずは座標平面に、y=2x+4 を1本引いて、そこにA、Bを取り、右下の (2, 0) にCを打ってみてください。図が描けた時点で、この問題は半分終わっています。
点Aがy軸上にあることは、多くの場合、問題文ではなく図に書かれています。図から読み取る条件はここです。読み落とすとAの座標が決まらないので、手をつける前に確認しておきましょう。
そして(3)の聞き方に注目してください。面積比を聞かれているのであって、面積を聞かれてはいません。ここが今日のいちばん大事なところです。
核になる考え方: 高さが同じ三角形は、底辺の比がそのまま面積比になる
三角形の面積の公式は、こうでした。
三角形の面積 = 底辺 × 高さ ÷ 2
いま、2つの三角形を比べたいとします。もしこの2つの三角形の高さが同じなら、「× 高さ」も「÷ 2」も、どちらの三角形にも同じようにかかります。比を取ると、同じものは消えてしまいます。残るのは底辺だけです。
高さが等しい三角形の面積比 = 底辺の比
これが今日の道具です。では、今回の△ABCと△ACDは高さが同じなのでしょうか。
2つの三角形を見比べると、どちらにも点A、点Cが入っています。共通の頂点はCだと思ってください。そして残りの頂点は、△ABCがB、△ACDがDです。ここでカギになるのが、B も D も、A と同じ直線 y=2x+4 の上に乗っているという事実です。
底辺をABと見る、底辺をADと見る。どちらの底辺も同じ1本の直線の上にあります。ということは、その底辺から点Cまでの距離、つまり高さは、2つの三角形で同じ1本になります。
高さが同じだと分かった時点で、面積を1つも計算しなくていいことが確定します。やることは「ADとABの長さの比を出す」だけ。斜めの線分の長さそのものも要りません。理由はステップ3で説明します。
ステップ1: 直線lと直線mの式を求める
まず、A、B、Cの3点の座標をそろえます。
点Aはy軸上にあるので、x座標は0です。y=2x+4 に x=0 を代入して、
A(0, 4)
点Bはx座標が -3 で、y=2x+4 の上にあります。代入すると、
y = 2 × (-3) + 4
y = -2
B(-3, -2)
点Cは問題文にそのまま書いてあります。C(2, 0) です。
材料がそろいました。直線lは、AとCを通る直線です。傾きは「yの増加量 ÷ xの増加量」で出します。
傾き = (0 – 4) ÷ (2 – 0)
= -4 ÷ 2
= -2
y切片は、直線lがy軸と交わる点のy座標です。点Aがまさにy軸上の点なので、y切片は4とそのまま読めます。
(1)の答え: y = -2x + 4
次に直線mです。BとCを通ります。
傾き = (0 – (-2)) ÷ (2 – (-3))
= 2 ÷ 5
= 2/5
y = 2/5 x + b と置いて、C(2, 0) を代入します。
0 = 2/5 × 2 + b
0 = 4/5 + b
b = -4/5
(2)の答え: y = 2/5 x – 4/5
ステップ2: 点Dの座標を求める
(3)に入ります。点Dは「点Cを通り傾き -2/3 の直線」と「直線AB」の交点でした。
ここで1つ、時間の節約になる見方があります。直線ABとは、AとBを通る直線のことですね。ところがAもBも、もともと y=2x+4 の上に取った点でした。つまり、直線ABはもとの直線 y=2x+4 そのものです。改めて式を求め直す必要はありません。
もう一方の直線を作ります。傾きが -2/3 と分かっているので、
y = -2/3 x + b
と置いて、通る点C(2, 0) を代入します。
0 = -2/3 × 2 + b
0 = -4/3 + b
b = 4/3
y = -2/3 x + 4/3
2本の直線の式が出ました。交点は、yの値が等しくなるところなので、
2x + 4 = -2/3 x + 4/3
分数のままだと計算しにくいので、両辺に3をかけます。
6x + 12 = -2x + 4
6x + 2x = 4 – 12
8x = -8
x = -1
x座標が出たら、y=2x+4 に戻して、
y = 2 × (-1) + 4 = 2
D(-1, 2)
ステップ3: AD:ABの比から面積比を出す
いま、A(0, 4)、D(-1, 2)、B(-3, -2) の3点が手元にあります。この3点は、どれも y=2x+4 の上に乗っています。同じ1本の直線に並んでいる、ということです。
同じ直線上に並んだ点どうしの長さの比は、x座標の差の比だけで出せます。斜めの線分の長さを三平方の定理で出す必要はありません。傾きが同じ1本の直線なのだから、x方向に進んだ分に比例して、線分の長さも伸びるからです。同じ直線上の長さの比は、x座標の差の比でそのまま置きかえられます。
ADのx座標の差は、
|-1 – 0| = 1
ABのx座標の差は、
|-3 – 0| = 3
AD : AB = 1 : 3
ここまで来たら、あとは公式に戻すだけです。底辺をADと見た三角形が△ACD、底辺をABと見た三角形が△ABC。高さは共通でした。だから面積比は底辺の比と同じになります。
ここで書く順番に気をつけてください。問題で聞かれているのは「△ABCと△ACD」の順なので、大きいほうの△ABCを先に書きます。
(3)の答え: △ABC : △ACD = 3 : 1
底辺の比のほうは AD : AB = 1 : 3 でした。答えを書くときに、この「1 : 3」をそのまま持ってくると、向きが逆になります。どちらの三角形を先に書くかを、問題文に指で当てながら確認するクセをつけてください。
検算: 実際の面積を出して 3:1 を確かめる
比だけで出した答えは、本当に合っているのか不安になります。今回は実際の面積でも確かめられるので、やっておきましょう。
使うのは、直線 y=2x+4 とx軸の交点です。y=0 を代入して、
0 = 2x + 4
x = -2
交点をEとすると E(-2, 0) です。EもCもx軸の上にあるので、線分ECの長さは x座標の差で 2 – (-2) = 4 と出ます。このECを共通の底辺にして、三角形を分けて数えます。
△ABCは、ECを底辺にした2つの三角形に分かれます。頂点Aは x軸の上側、頂点Bは下側にあるので、足し算です。
△AEC = 4 × 4 ÷ 2 = 8
△BEC = 4 × 2 ÷ 2 = 4
△ABC = 8 + 4 = 12
△ACDのほうは、△AECから△DECを引けば出ます。点Dのy座標は2でした。
△DEC = 4 × 2 ÷ 2 = 4
△ACD = 8 – 4 = 4
12 : 4 = 3 : 1。比で出した答えと一致しました。
答えの吟味もしておきます。点Dのx座標は -1 で、Aの0とBの -3 のあいだにありました。つまりDは線分AB上にあり、△ACDは△ABCの内側にすっぽり入っています。内側にある三角形のほうが小さいのは当たり前ですね。図の上で「どっちが大きいか」を先に見ておくと、比の順番の書き間違いに自分で気づけます。
よくあるつまずき
つまずき①: 面積を直接計算しようとして詰まる
いちばん多いのがこれです。底辺をABと見たとき、高さは「点Cから直線 y=2x+4 までの距離」になります。これは中2の道具では出せません。斜めの線分の長さも、三平方の定理を習う前だと手が出ません。
つまり、「面積比」と聞かれたら、面積を出さずに済む形を先に探すのが正解ルートです。共通の頂点はどこか、底辺が同じ直線に乗っていないか。この2つを探す時間のほうが、面積を計算しようとして固まっている時間より、ずっと短く済みます。
つまずき②: 比の順番を逆に書く
底辺の比 AD : AB = 1 : 3 が出た勢いで、答えにもそのまま 1 : 3 と書いてしまう。これだと「△ACDのほうが大きい」という意味になってしまい、数学的に別のことを言っています。
対策はシンプルです。答えを書く直前に、問題文の「△ABCと△ACDの面積比」の部分をもう一度読む。聞かれた順に並べる。それだけで防げます。
つまずき③: マイナスの引き算で符号を落とす
傾きを出すところが危ないです。BとCなら、xの増加量は 2 – (-3) です。ここを 2 – 3 = -1 と書いてしまうと、傾きが -2 になって、以降の答えが全部ずれます。マイナスの数を引くときは、カッコをつけてから計算してください。
代入のところも同じです。-2/3 × 2 は -4/3。ここでマイナスが消えると、点Dの座標が変わってしまいます。
つまずき④: 長さの比を距離の公式で出そうとする
ADとABの長さを、それぞれ根号を使って出そうとする人がいます。間違いではありませんが、遠回りです。同じ直線上に並んでいる3点なら、x座標の差だけで比が出ます。根号の計算が入らないぶん、計算ミスも減ります。
FAQ
Q. 2つの三角形の高さが同じかどうかは、どうやって見分けますか?
A. 見るところは2つです。①2つの三角形に共通の頂点があるか ②残りの辺(底辺にしたい辺)が、同じ1本の直線に乗っているか。この2つがそろえば高さは共通です。今回は共通の頂点がC、底辺のABとADがどちらも y=2x+4 の上でした。図に直線を1本なぞって、点が全部その上に乗っているかを指で確かめると分かりやすいです。
Q. 点Dが線分ABの外に出ることはありますか?
A. あります。Cを通る直線の傾き次第で、Dが線分ABの外側に出る問題もあります。その場合でも「高さが共通だから底辺の比」という考え方は同じですが、どちらの三角形が大きいかが変わります。座標を出したら図に点を打って、位置関係を目で確かめてください。今回はx座標が -1 で、Aの0とBの -3 のあいだに収まっていました。
Q. 面積比は「3:1」と「1:3」、どちらで答えてもいいですか?
A. 聞かれた順番に合わせてください。今回は「△ABCと△ACDの面積比」なので、△ABCを先に書いて 3:1 です。比は順番に意味があるので、入れかえると別の答えになります。答案では、三角形の名前と比の並びを対応させて書いておくと安全です。
Q. 直線ABの式は、AとBの座標から求め直さなくていいのですか?
A. 今回は求め直さなくて大丈夫です。AもBも、はじめから y=2x+4 の上に取った点として作られているからです。問題文の「y=2x+4と直線lの交点をA」「y=2x+4と直線mの交点をB」という書き方に、その情報が入っています。問題文の作られ方を読むと、手数が1つ減ります。
まとめ
この問題のポイント
- 面積比を聞かれたら、面積を出さずに済む形を先に探す
- 高さが等しい三角形の面積比は、底辺の比と同じになる
- 今回は共通の頂点がC、底辺のABとADが同じ直線 y=2x+4 の上 → 高さは共通
- A(0, 4)、B(-3, -2)、C(2, 0)。直線lは y=-2x+4、直線mは y=2/5 x – 4/5
- 直線ABはもとの y=2x+4 そのもの。求め直さなくてよい
- Cを通る傾き -2/3 の直線 y=-2/3 x + 4/3 との交点が D(-1, 2)
- 同じ直線上の長さの比はx座標の差の比。AD : AB = 1 : 3
- 答えは聞かれた順に。△ABC : △ACD = 3 : 1
- 検算は実際の面積で 12 : 4 = 3 : 1
一次関数の応用問題は、計算が難しいのではなく、「何を計算しなくていいか」に気づけるかどうかで差がつきます。面積比を底辺の比に置きかえる今日の一手は、高校入試でも形を変えて何度も出てきます。似た問題に出会ったとき、共通の頂点と同じ直線を探すところから始めてみてください。
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