一次関数の計算はできるのに、「2直線がy軸上で交わるとき」と言われたとたん、何を求めればいいのか分からなくなる。中2の一次関数で、とても多いつまずきです。

この問題、もう何のこっちゃって感じでした、最初から。y軸上で交わるって書いてあるけど、そもそもy軸上ってどこのことですか?あと、交わるのって1点しかなくないですか?

いい引っかかり方をしてるね。じつはそこが分かれば、この問題は「2つの式のy切片が同じ」というだけの話に化けるんだ。まずはグラフを1枚描いて、y軸上で交わるってどういう景色なのかを見にいこうか。
この記事では、条件を言い換えるところから、分数の係数の消し方、最後の検算までを順番に説明します。式は1本しか立ちません。
先に動画で確認したい方はこちらからどうぞ。
今回の問題
今回考えるのは、次の問題です。
> 2直線 y=2x-3, y=-1/2x+5/2a がy軸上で交わるとき、定数aの値を求めなさい
文字がxとaの2つ出てきて、しかも係数が分数。見た瞬間に手が止まりやすい形をしています。でも、やることは決まった手順に落ちます。
先に答えを言っておくと a=-6/5 です。そこにたどり着くまでに必要なのは、「y軸上で交わる」という日本語を、式で扱える言葉に翻訳することだけ。翻訳さえできれば、残りは中1で習った方程式の計算に戻ります。
実際に生徒とやり取りしながら解いていく様子は、動画でも解説しています。手つきごと見たい人はこちらもどうぞ。
考え方の核: 「y軸上で交わる」は「y切片が等しい」と言い換える
この問題のカギは、たった1つの言い換えです。
2直線がy軸上で交わる、ということは、2つの式のy切片が等しいということ。
なぜそうなるのか、グラフで確認しておきましょう。y軸というのは、座標平面のまん中を縦に走っている線のことです。そして直線とy軸がぶつかる点を、y切片と呼びました。y=ax+b という形なら、bの部分がy切片です。
さて、2本の直線があって、その交点がy軸の上にあるとします。交点というのは、2本が同じ場所を通っている点のことですね。その点がy軸の上にあるのだから、1本目がy軸をまたぐ場所と、2本目がy軸をまたぐ場所が、同じ高さになっていないといけません。
つまり、2本の直線のy切片が、ぴったり同じ値になっている。これが「y軸上で交わる」の正体です。
交点が1つしかないことに違和感を持った人は、感覚が正しいです。傾きの違う2直線は、必ず1点だけで交わります。この問題は「その1点が、たまたまy軸の上にある」という状況を指定しているわけです。
ステップ1: 2つの式のy切片を、それぞれ読み取る
言い換えができたら、あとは作業です。2つの式から、y切片にあたる部分を取り出します。
1本目は y=2x-3 です。y=ax+b の形と見比べると、xがついていない項が -3。ですから、
1本目のy切片は -3
です。ここでの注意は、マイナスまで込みでy切片だということ。3ではなく-3です。グラフでいえば、y軸の0より下、原点から3つ下がったところを通っています。
2本目は y=-1/2x+5/2a です。xがついている項は -1/2x、xがついていない項は 5/2a ですね。aは定数、つまり「まだ値は分からないけれど、ある1つの数」を表す文字です。xのように動く文字ではないので、5/2a はひとかたまりの数として扱えます。
2本目のy切片は 5/2a
「aが入っているのにy切片って言っていいの?」と思うかもしれませんが、大丈夫です。aが何かの数に決まれば、5/2a も1つの数に決まります。文字が残っていても、xがついていなければy切片です。
ステップ2: y切片が等しいので、方程式を1本立てる
材料がそろいました。1本目のy切片が -3、2本目のy切片が 5/2a。この2つが等しいのだから、
-3 = 5/2 a
これが、この問題で立てるべき式です。1本だけです。
ここで一度立ち止まってほしいところがあります。この問題、途中でxが1回も出てきていません。y軸上で交わるという条件を、y切片という「xと関係のない場所」の話に翻訳したので、xを使う場面がそもそも無いのです。
条件を言い換えた時点で、問題は一次関数から一次方程式に変わっている。ここが、この問題のいちばんおいしいところです。連立方程式を立てて交点を出そうとすると、文字が3つ絡んで一気に面倒になりますが、その必要はありません。
なお、-3 = 5/2 a のように、求めたい文字が右側にある形のままで構いません。左右を入れかえて 5/2 a = -3 と書き直してから解いてもいいですし、そのまま進めても答えは同じです。
ステップ3: 分数の係数は、逆数をかけて消す
-3 = 5/2 a
この式から a を求めます。ここが、この問題でいちばん手が止まる場所です。
まず、やってはいけない方をはっきりさせておきます。5/2 を左辺に移項してはいけません。移項できるのは、足し算・引き算でくっついている項だけです。5/2 と a はかけ算でくっついているので、移項の対象になりません。
かけ算でくっついている数を消すときは、その逆数を両辺にかけます。5/2 の逆数は、分子と分母をひっくり返した 2/5 です。
-3 × 2/5 = 5/2 a × 2/5
右辺を見てください。5/2 × 2/5 は 1 になるので、aだけが残ります。これが逆数をかける理由です。
-6/5 = a
左辺は -3 × 2/5 なので、-3×2=-6 が分子、分母は 5 のままで -6/5 です。
a = -6/5
これが答えです。分母の5は約分できないので、-6/5 のままが最終形になります。帯分数の -1と1/5 に直す必要はありません。中学の答案では、仮分数のままで問題ありません。
割り算で処理してもかまいません。-3 ÷ 5/2 は、割る数の逆数をかけて -3 × 2/5 になるので、結局やっていることは同じです。分数の係数は「逆数をかける」か「その分数で割る」、どちらかの道しか無いと覚えておくと迷いません。
検算: a=-6/5 を式にもどして確かめる
出した答えは、元の式にもどして確かめます。30秒でできるので、やる価値があります。
2本目の式のy切片は 5/2a でした。ここに a=-6/5 を入れます。
5/2 × (-6/5)
分子どうし、分母どうしをかけると -30/10 です。約分して、
= -3
きれいに -3 になりました。1本目のy切片も -3 でしたから、2本の直線はどちらも点(0, -3)を通ることになります。y軸の上で交わっている、という条件と一致しました。
答えの吟味も1つ。答えがマイナスになることに不安を持たなくて大丈夫です。y切片が -3 という負の数なのだから、それを作り出すaも負の数になるのが自然です。むしろ、答えが正の数になったときのほうが、どこかで符号を落としていないか見直すサインになります。
グラフでも確かめておくと安心です。1本目は傾き2で右上がり、2本目は傾き-1/2で右下がり。傾きが違うので交点は1つだけ。その1つが(0, -3)にある、という絵が描けていれば完璧です。
よくあるつまずき
つまずき①: 5/2 を移項してしまう
いちばん多いのがこれです。-3 = 5/2 a を見て、5/2 を左辺に移して -3-5/2 = a としてしまう。移項は「足し算・引き算でつながっている項を、符号を変えて反対側へ動かす」操作なので、かけ算でくっついている 5/2 には使えません。
見分け方はシンプルです。文字と数のあいだに +や- があるかどうか。 5/2+a なら移項できますが、5/2a はかけ算なので逆数をかける。つなぎ目が+なのか×なのかを見る、それだけです。
つまずき②: 連立方程式を立ててしまう
「2直線が交わる」という言葉を見ると、反射的に2つの式を連立させたくなります。間違いではないのですが、今回は遠回りです。連立させると x と y と a の3つが絡み、y軸上という条件を x=0 として追加で入れる手間もかかります。
結局その計算をしても、x=0 を代入した時点で -3 = 5/2a に戻ってきます。y軸上と言われたら、交点を求めにいかずy切片を比べる。この一手で計算量がまるごと減ります。
つまずき③: 5/2a を「5」と「2a」に読んでしまう
分数の係数に文字がついている形は、読み間違いが起こりやすいところです。5/2a は「5分の2かけるa」ではなく、「2分の5かけるa」です。書くときは (5/2)a のようにカッコで囲うか、分数の右横にaを添える形にすると、自分でも読み違えにくくなります。
答案では、分数と文字の位置関係が採点者に伝わる書き方をしてください。ここが崩れていると、考え方が合っていても伝わりません。
FAQ
Q. 「y軸上で交わる」と「x軸上で交わる」は、何が変わりますか?
A. 比べる場所が変わります。y軸上で交わるならy切片どうしを等しいと置きますが、x軸上で交わるなら、2直線がy=0になるときのxの値、つまりx切片どうしを等しいと置きます。x切片は式にそのまま書いていないので、y=0を代入して自分で計算する必要があります。y軸上のほうが式から直接読めるぶん、ラクな設定です。
Q. どうして交点は1点しかないのに「y軸上で」とわざわざ書くのですか?
A. 傾きが違う2直線の交点はたしかに1点だけですが、その1点がどこにあるかは、式によって変わります。y軸の上にあることもあれば、第1象限の真ん中あたりにあることもあります。この問題は「その1点をy軸の上に来させたい。そのためにはaがいくつであればいいか」を聞いています。aの値によって2本目の直線が上下に動くところをイメージすると、しっくりきます。
Q. 答えは -6/5 のままでいいのですか?小数に直しますか?
A. -6/5 のままで大丈夫です。小数に直すと -1.2 になりますが、中学の答案では分数のままが基本です。割り切れない分数のときに小数で書くと誤差が出てしまうので、分数で答える習慣をつけておくと、この先ずっと安全です。約分できるかどうかだけ確認してください。6と5に共通の約数は無いので、これ以上は約分できません。
Q. 授業を聞いても分からなかったところは、どうすればいいですか?
A. 動画は何度でも見返せます。速さも変えられるので、0.75倍速や0.5倍速にして、手を動かしながらゆっくり追いかけてみてください。そのうえで、翌日にもう一度、何も見ずに自分で解き直してみるのがおすすめです。解けるかどうかは、聞いた直後ではなく次の日に分かります。
まとめ
この問題のポイント
- 「y軸上で交わる」は「2つの式のy切片が等しい」と言い換える。ここがすべての出発点
- y=2x-3 のy切片は -3。マイナスまで込みで読む
- y=-1/2x+5/2a のy切片は 5/2a。aは定数なので、文字が残っていてもy切片でよい
- 等しいと置いて -3 = 5/2 a の1本だけを立てる。xは1回も出てこない
- 5/2 はかけ算でついているので移項できない。逆数の 2/5 を両辺にかけて消す
- -3 × 2/5 = -6/5 より a=-6/5。分数のまま答える
- 検算は 5/2 × (-6/5) = -3。1本目のy切片と一致すればOK
一次関数の文章条件は、解きにくくするための飾りではなく、式に翻訳するための合図です。「y軸上で交わる」が「y切片が等しい」に見えるようになると、同じ型の問題で手が止まる時間がぐっと短くなります。順番にやれば、解ける問題は確実に増えていきます。
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