直角三角形に角の二等分線を引いて、できた小さい三角形の面積を求める。角の二等分線でできる三角形の面積の求め方は、中3数学の相似な図形で出てくる形です。角の二等分線と辺の比で「比」までは出せても、その比をどうやって「面積」につなげるのかで、手が止まりやすいところです。
この記事であつかうのは、授業で一緒に解いた1問です。生徒は、角の二等分線と辺の比の関係を使って、6対4という比までは自分で出せていました。そのあとのやり取りがこちらです。

そこからは分からなかったです

なるほどね OKです そこまでできたらめちゃくちゃグッドです
この記事では、比を簡単にするところから始めて、大きい三角形ABCの面積、面積の比と底辺の比の関係、そして比から△ADCの面積を出すところまで、授業と同じ流れで進めます。
先に動画で確認したい方はこちらからどうぞ。
今回の問題と、授業で止まっていたところ
今回いっしょに考えるのは、この問題です。以前公開していた授業動画では、【相似な図形】の問題として紹介していた1問です。
下の図の直角三角形で、∠BACの二等分線とBCの交点をDとするとき、△ADCの面積を求めなさい。
図は、∠A=90°の直角三角形ABCで、AB=6cm、AC=4cmです。点Dは辺BCの上にあり、ADが∠Aをちょうど2等分しています。求めるのは、A、D、Cを結んだ三角形の面積です。
授業で先生は、まず生徒がどこまで分かっていて、どこで止まったのかを確かめました。生徒は、角の二等分線と辺の比の関係から、6対4という比までは出せていました。先生の言葉では「それを使って6対4ってことは分かったわけだよね」。生徒の返事は「はい」です。
そのうえで先生は「ここまでいったらあとは面積について考えれば実は終わります」「結構いいところまでいってます」と言っています。辺の比が出せたら、残りは面積の話だけです。
では、なぜそこで止まったのでしょうか。比は長さの話で、問題が聞いているのは面積です。△ADCの面積を「底辺×高さ÷2」で出そうとしても、底辺DCの長さも、高さの長さも、問題には書かれていません。ここは授業では扱っていない補足ですが、斜辺BCの長さは三平方の定理を使えば出せます。ただ、ルートが出てきて計算が重くなりますし、そもそもこの問題には必要ありません。
この問題で使う道具は、次の3つです。
- 角の二等分線と辺の比(BD:DC=AB:AC)
- 直角三角形の面積は、直角をはさむ2辺を底辺と高さにして出せる
- 高さが同じ三角形どうしは、面積の比が底辺の比になる
長さを1つずつ出していくのではなく、比のまま面積につなぐ。これが今回の考え方です。
ステップ1:角の二等分線でBD:DC=3:2、BC:DC=5:2
手元の解説に入って、先生が最初に確かめたのは辺の比です。先生の言葉では「角の二等分線と辺の比の関係から」「BD対DCは6対4になる」。
角の二等分線と辺の比の関係は、∠Aの二等分線がBCと交わる点をDとすると、BDとDCの比が、∠Aをはさむ2辺ABとACの比に等しくなる、というものです。AB=6cm、AC=4cm なので、こうなります。
BD:DC=AB:AC=6:4
続けて先生は「この6対4はもうちょっと簡単な比にできるよね」「どっちも偶数だから2で割ってあげて 3対2になると」と、比を簡単にしています。
BD:DC=6:4=3:2
そして「なのでこの情報を書いておきましょうか」と言って、図のBDに③、DCに②と書きこみました。先生の言葉では「ここは③ ここは②になってると」。
この丸数字が、あとで効いてきます。BCは、BDとDCを合わせた長さです。③と②を合わせると⑤なので、BC:DCはすぐに出ます。
BC:DC=(3+2):2=5:2
授業では、このBC:DCを、ステップ2の△ABCの面積を出したあとで聞いています。先生の「ということはBC対DCっていくつになるか分かるかな」に、生徒は「5対2」と答えました。先生は「ここは3足す2してあげて5」「でDCの方が2になるわけだよ」と確かめています。
比を丸数字で図に書きこんでおくと、BCの⑤がすぐ見える。BD:DCという「部分どうしの比」から、BC:DCという「全体と部分の比」に読みかえる。この一手が、次のステップで面積の比につながります。
ステップ2:△ABCの面積は、直角を底辺と高さに見立てて12cm²
次は、一番大きい三角形ABCです。授業で先生は、△ABCをBCを底辺にして表したあと、「でも三角形ABCっていうのはこういう風にも 表されるけど」「別の表し方っていうのがあるよね」と続けました。
理由は、∠BACが90°だからです。先生の言葉では「ここが角BACが90度になってるってことは」「4cmの方をちょっとこの図を回転させると」「こういう風に見てあげると」「底辺ACが4cm」「高さABが6cmっていう風に考えることができるよね」。
直角三角形では、直角をはさむ2辺がおたがいに垂直です。だから、片方を底辺にすると、もう片方がそのまま高さになります。図のままだと斜めに見えるので、ACが下にくるように図を回して見る、というのが先生の見せ方でした。
△ABC=2分の1×4×6
先生の「これ計算するといくつになる?」に、生徒は「12」と答えています。面積なので単位は cm² です。
△ABC=12cm²
ここは授業では扱っていない補足ですが、ABを底辺、ACを高さと見ても、2分の1×6×4=12で同じです。どちらを底辺にしても、直角をはさむ2辺を使うことに変わりはありません。
直角三角形は、直角をはさむ2辺がそのまま底辺と高さ。この問題で、図に書かれた長さだけからすぐに面積が出せるのは、この△ABCです。△ADCの面積は、この12から比を使って出していきます。
ステップ3:高さAHが共通なので、面積の比は底辺の比
ここがこの問題の心臓部です。授業で先生は、△ABCの面積を出す前に、△ADCについてこう話していました。「底辺の長さってのはDCにするとして高さを知りたいけれども」「高さを今ある情報の中では表せないから」。
そこで先生は、点Aから辺BCに垂線を下ろしました。「点Aから垂線」「90度になるように垂線を下ろしてあげる」「この点をHっていう風に置いてあげよう」。
△ADC=2分の1×DC×AH
先生は「2分の1×底辺DC×高さAHっていう風に表せるんだよね」「ここまでは大丈夫かな」と確かめ、生徒は「はい」と答えています。
続けて△ABCも、BCを底辺にして同じように表します。先生の言葉では「2分の1×底辺がBCで高さは同じAHになるわけでね」。
△ABC=2分の1×BC×AH
B、D、Cは同じ1本の直線BCの上にあって、2つの三角形はどちらも頂点がAです。だから、Aから直線BCまでの距離AHが、2つの三角形の共通の高さになります。
ここで2つの面積を比にします。
△ABC:△ADC=(2分の1×BC×AH):(2分の1×DC×AH)
先生は「どっちもこれAHって含まれてるよね」「なのでこれはキャンセルできますと」「で2分の1これもどっちにもあるから」「これも消すことができるね」と、両方に共通するものを消していきました。残るのはこれだけです。
△ABC:△ADC=BC:DC
BC:DCはステップ1で出した5:2なので、先生の言葉では「この面積比っていうのは5対2になるわけだ」。
△ABC:△ADC=5:2
注目してほしいのは、AHの長さを最後まで一度も出していないことです。高さが分からないから止まるのではなく、分からないままAHという文字で置いておく。比にすると、両方に同じAHがかかっているので消えてしまいます。長さの分からない高さでも、文字で置けば比の中で消せる。
高さが同じなら面積の比は底辺の比、という考え方は、中2の一次関数でも出てきます。座標から長さの比を出して、面積を1つも計算せずに面積比を答える問題を解説した記事があります。今回はその先で、比から実際の面積まで戻すところが違います。

ステップ4:12:S=5:2から△ADCの面積を出す
材料がそろいました。先生は「じゃあ三角形ADCの面積をSっていう風に置いときましょう」と言って、求める面積を文字で置いています。△ABCの面積は、ステップ2で出した12cm²でした。
12:S=5:2
ここからの先生の考え方はこうです。「ってことは ここからここには5分の12倍してるわけだよね」。
比の5が、実際の面積では12になっています。5を何倍すると12になるかというと、5分の12倍です。同じ比の中なので、2のほうにも同じ5分の12倍がかかります。先生の言葉では「Sっていうのは2に5分の12倍してあげたもの」。
S=2×5分の12
先生の「これいくつになるかな」に、生徒は「5分の24」と答えました。先生も「5分の24で」「今回単位cmってのがあるから」「cm² これが今回の三角形ADCの面積になります」と締めています。
答え:5分の24 cm²
小数で書くと 4.8cm² です。
ステップ1で図に書いた丸数字で言いかえると、比の⑤が面積の12なので、①は5分の12、②は5分の24。比の「1つ分」が面積でいくつになるかを出せば、比から面積に戻せます。
ここは授業では扱っていない補足ですが、比例式の性質「外側どうしの積と内側どうしの積は等しい」を使っても同じ答えになります。
12×2=S×5
5S=24
S=5分の24
どちらのやり方でも構いません。授業のように「何倍しているか」で考えると、なぜその答えになるのかが目で追いやすくなります。
答えの検算:別の道と座標で確かめる
ここからは授業では扱っていない補足ですが、答えが出たら、つじつまが合っているかを確かめておきましょう。
確かめ1:DCがBCの5分の2であることから出す
BD:DC=3:2 なので、DCはBC全体の5分の2です。高さAHは共通なので、△ADCの面積も△ABCの5分の2になります。
△ADC=12×5分の2=5分の24
授業の答えと一致しました。
確かめ2:残りの△ABDと足して12に戻るか
BDはBCの5分の3なので、△ABDは△ABCの5分の3です。
△ABD=12×5分の3=5分の36
5分の36+5分の24=5分の60=12
2つ合わせて△ABCの12に戻りました。△ABD:△ADC=36:24=3:2 で、BD:DCとも一致しています。
確かめ3:座標に置いて、Dの位置と面積を確かめる
Aを原点にして、ABをx軸、ACをy軸にとります。B(6, 0)、C(0, 4) です。DはBからCへ向かって、BCの5分の3だけ進んだ点なので、座標はこうなります。
x座標:6−6×5分の3=5分の12
y座標:0+4×5分の3=5分の12
D(5分の12, 5分の12) で、x座標とy座標が等しくなりました。直線 y=x は、x軸とy軸がつくる直角をちょうど2等分する直線なので、Dはたしかに∠Aの二等分線の上にあります。△ADCは、底辺ACが4、高さがDのx座標の5分の12なので、こうなります。
△ADC=2分の1×4×5分の12=5分の24
最後に大きさの見当です。DCはBCの半分より短いので、△ADCは△ABCの半分の6より小さいはずです。4.8は6より小さいので、見当とも合っています。答えが出たら、全体の面積と比べて大きさの見当をつけると、比の向きの取りちがえに自分で気づけます。
よくあるつまずき
ここも授業では扱っていない補足をふくみますが、この問題で手が止まりやすい場所をまとめておきます。
- 辺の比の対応を逆にする。BDはB側の線分なのでABと、DCはC側の線分なのでACと対応します。BD:DC=AC:AB と書いてしまうと、比が2:3になり、答えも変わります。図の上で、同じ側どうしを指でなぞって確かめてください
- 面積の比にBD:DCの3:2をそのまま使う。△ABCと△ADCの底辺はBCとDCなので、使う比はBC:DC=5:2 です。授業でも、先生は3+2で5を作ってから面積の比に進んでいました
- 高さAHの長さを出そうとして止まる。AHは比の中で消えるので、長さを出す必要はありません。授業で先生が「キャンセルできます」と言っていた部分です
- △ABCの面積を、斜辺BCを底辺にして出そうとする。BCの長さも、BCに対する高さも分からないので進めません。直角をはさむACとABを底辺と高さにします
- 12:S=5:2 から、Sを 12×2分の5 のように逆向きに出してしまう。△ADCは△ABCの内側にある小さい三角形なので、Sは12より小さくなるはずです
- 単位を cm のまま書く。面積の単位は cm² です
どれも、公式を知らないことよりも、比を書くときの向きや対応の確認がぬけることで起きやすいつまずきです。比を1つ書くごとに、図のどの線分どうしの比なのかを指でさして確かめてください。
よくある質問
ここは授業では扱っていない補足です。
Q. 角の二等分線と辺の比は、なぜ成り立つのですか?
A. 今回の「高さが同じなら面積の比は底辺の比」を使うと説明できます。DからAB、ACに垂線DE、DFを下ろします。△AEDと△AFDは、斜辺ADが共通で、∠EAD=∠FAD なので合同になり、DE=DF です。だから、△ABD:△ADC=(2分の1×AB×DE):(2分の1×AC×DF)=AB:AC。一方で、Aから下ろした高さAHは共通なので、△ABD:△ADC=BD:DC でもあります。この2つから BD:DC=AB:AC が言えます。Cを通りADに平行な線を引いて、平行線と線分の比で説明する方法もあります。
Q. ∠Aが90°でないときも、同じ解き方でいいですか?
A. 辺の比を出すところと、面積の比を底辺の比に置きかえるところは同じです。変わるのは△ABCの面積の出し方です。今回は∠A=90°だったので、ACとABをそのまま底辺と高さにできました。直角がないときは、問題に書かれた別の条件から△ABCの面積を出すことになります。
Q. 線分の比を使う問題を、ほかにも練習したいです。
A. 中2の図形で、平行四辺形の中に中点が2つあるとき、線分EFとMBの比を求める問題を解説した記事があります。どの線分とどの線分の比なのかを、図の上で1つずつ確かめていく練習になります。

まとめ
今回の問題は、比を出して、比のまま面積につなぐ1問でした。角の二等分線と辺の比で BD:DC=6:4=3:2、③+②=⑤ で BC:DC=5:2。△ABCは∠A=90°なので、ACを底辺、ABを高さにして 2分の1×4×6=12cm²。Aから下ろした高さAHが共通なので、△ABC:△ADC=BC:DC=5:2。最後に 12:S=5:2 から、比の5が12なら2はその5分の12倍として、△ADCの面積は5分の24 cm²(4.8cm²)でした。
授業の生徒も、6対4という比を出したところで止まっていました。それでも、先生と一緒に高さAHを置いて、面積を比で表してみると、最後は自分で「5分の24」と答えを出しています。長さが分からないところは文字で置いてみる。比を書いたら、図のどの線分の比なのかを確かめる。この2つを意識して、解き直してみてください。
この問題のポイント
- 角の二等分線と辺の比で、BD:DC=AB:AC=6:4=3:2
- 図に③と②を書きこむと、BC:DC=5:2 がすぐ見える
- 直角三角形は、直角をはさむ2辺がそのまま底辺と高さ。△ABC=2分の1×4×6=12cm²
- Aから垂線AHを下ろすと、△ABCと△ADCの共通の高さになる
- 面積の比を作ると、2分の1とAHが消えて △ABC:△ADC=BC:DC=5:2
- 12:S=5:2 は、比の5が12になる倍率を2にもかけて求める
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