連立方程式の解き方は分かっている。加減法も代入法も習った。それなのに答えが合わなくて、見直しのたびに「どこで間違えたんだろう」と最初から追いかけ直すことになる。連立方程式の計算ミスは、中2数学でよく聞くつまずきです。
この記事では、計算ミスを「注意して見直す」で減らすのではなく、そもそもミスが起きる場所を先に減らしてしまうという考え方を、授業で扱った1問を通して説明します。使うのは、文字を消しにいく前にもう一段階はさんで、係数の小さい式を自分で作ってしまう手です。

この問題、ちょっと合わせようとしたんですけど、数が素数っていうのがあって、無理かなと思って。

そうだね。11と17はどっちも素数だから、xの係数をそろえようと思うと、上の式を17倍して下の式を11倍することになる。数が一気に大きくなって、計算が大変になっちゃうよね。だから今回は、いきなり文字を消しにいかずに一段階はさむやり方でいってみよう。
おっしーが授業で言っているのは、「基本的に一つの文字を消すっていう方針がベストです」。そのうえで、「でも、ちょっと解きにくい時は、一段階挟んであげるといいことがあります」と続けています。今回は、その「一段階」の中身を順番に見ていきます。
先に動画で確認したい方はこちらからどうぞ。
今回の問題
授業で扱ったのは、次の連立方程式です。
> 次の連立方程式を解きなさい。
> 11x−13y=61 …①
> 17x−19y=91 …②
出てくる係数は11、13、17、19。右辺は61と91。どれも2桁で、しかも中途半端な数です。見た瞬間に「これ、計算が重たいやつだ」と身構えるタイプの問題だと思います。
授業の冒頭でも、おっしーは「まあ普通に力技でも解けるんだけど」と言っています。力技というのは、いつもどおりステップを踏んで、どちらかの文字の係数をそろえて消す解き方のことです。
では、その力技がどれくらい重たいのか。xを消す形で係数をそろえると、①を17倍、②を11倍することになります。手元で計算するとこうなります。
17×① → 187x−221y=1037
11×② → 187x−209y=1001
ここから差を取れば −12y=36 となって、y=−3 にはたどり着きます。答えは出ます。ただ、途中に並ぶ数が3桁から4桁になりました。(この2本の式は授業の板書にはありません。どれくらい大きくなるかを筆者が手元で確かめた数です)
221と209を書き写す。1037から1001を引く。この作業が何回か続けば、どこかで1つ写し間違える。計算ミスというのは、注意力が足りないから起きるというより、手を動かす回数と桁が増えたところで起きます。
考え方の核: 文字を消す前に、簡単な式を先に作る
先に、連立方程式の基本の手順をおさらいします。授業の板書もこの2行から始まっています。
- ステップ1: x、yのどちらかの係数を合わせる
- ステップ2: x、yどちらかを消す
ステップ2の消し方は2つあって、代入して消すか、足したり引いたりして消すか。ここまではいつもどおりです。
ところが今回の問題は、おっしーの言葉を借りると「今回の問題だとこのステップ1の時で、めちゃくちゃ大変になる」。係数をそろえる段階そのものが重たい。さっき見た187や221は、まさにそのステップ1で出てきた数です。
そこで授業で出てきたのが、この一言です。
「じゃあ今回どうすればいいのかっていうと、ステップ1の前段階をやってあげればよくて」
ステップ1の前に、もう1つ段を足す。何をするかというと、どちらの文字も消さないまま、2つの式から「もっと簡単な式」が出てこないかを先に試すということです。
授業ではこう説明しています。「①と②の式をいきなりステップ1をやるんじゃなくて、どっちの文字も消さなくていいから、より簡単な式が出てこないかなっていうのをやってみる」。そして、簡単な式ができたあとは「今回だとこんな感じで簡単な式が出てくるから、これを使ってあげれば計算ミスが減らせるっていうことになります」と話しています。
文字を消すのが目的なのに、消さない計算をわざわざやる。最初は遠回りに見えます。でも、この一段階で係数が小さくなれば、そのあとに待っている大きなかけ算がまるごと消えます。
ステップ1: ②−① で、3本目の式をつくる
ここが今回の心臓部です。やることは1つ、②から①を引くだけです。
授業では「例えば、②−①をしてみましょう」と言って、筆算の形で縦に並べました。
17x−19y=91
−11x+13y=−61
2行目に注目してください。①をそのまま書いたのではなく、①の全部の符号をひっくり返した形になっています。引き算をするのだから、11x は −11x に、−13y は +13y に、そして右辺の 61 は −61 になります。
さて、この2本を足すとどんな式になるか。授業では、ここで生徒さんがこう答えました。
6x−6y=152
左辺は合っています。17x と −11x を足して 6x。−19y と +13y を足して −6y。ここまでは問題ありません。ずれたのは右辺です。
先生「いや、ここ −61 で、91−61 だから」
生徒「30」
91+61 ではなく、91−61 です。①を引くと決めた時点で、右辺の 61 も −61 に変わっています。左辺の符号はきちんと反転させたのに、右辺だけ元のまま足してしまう。これが授業でリアルタイムに出たミスで、この記事のテーマそのものでもあります。
正しくはこうなります。
6x−6y=30
そして、ここからがこの工夫のいちばんおいしいところです。おっしーは「で、全部6の倍数だから、全部6で割ってあげると」と言って、左辺も右辺もまとめて6で割りました。
6x ÷ 6 = x
−6y ÷ 6 = −y
30 ÷ 6 = 5
x−y=5 …③
これを③の式として置きます。係数が11、13、17、19だった連立方程式から、係数が1の式が1本生まれました。授業でも「こうしてあげると、ものすごく計算楽になるね」と言っています。
念のため確認しておくと、③は①と②から作った式なので、①と②の両方を満たすxとyは、③も満たします。新しい条件を勝手に足したわけではありません。
ステップ2: ①と③を使って、xを消してyを求める
③が手に入ったので、ここからが本来のステップ1とステップ2です。授業では「①の式と③の式を使って計算していきましょうか」と進めました。
どちらの文字を消すか。おっしーの判断はこうです。「で、x−y=5 なので、じゃあx消しましょうか」。③のxの係数は1なので、11倍すれば①の 11x とぴったりそろいます。大きな数をかける必要がありません。
やるのは ①−11×③ です。
① 11x−13y=61
−11×③ −11x+11y=−55
2行目の作り方を見ておきます。③の x−y=5 の各項に −11 をかけます。
x × (−11) = −11x
−y × (−11) = +11y
5 × (−11) = −55
授業でも、おっしーはyの符号がなぜプラスになるのかを、理由つきで言葉にして確認しています。「ここが −11y されてマイナスだから、ここプラス11yだね」。−y に −11 をかけると +11y 。マイナスとマイナスで符号が戻るところは、急いでいると素通りしやすい場所です。
では、縦に足します。
11x + (−11x) = 0
−13y + 11y = −2y
61 + (−55) = 6
−2y=6
xがきれいに消えました。あとは両辺を −2 で割るだけです。
y=−3
ここまでのかけ算で出てきた数を数えてみてください。11 と 55 だけです。最初に素直に係数をそろえていたら、187や221を相手にしていたところでした。同じ答えにたどり着くのに、手を動かす回数も、桁も、はっきり違います。
ステップ3: ③に代入して、xを求める
残りはxです。授業では「じゃあ、この式を③の式に代入しましょう」と進めました。
③は x−y=5 でした。ここに y=−3 を入れます。
x − (−3) = 5
マイナスのマイナスはプラスなので、
x+3=5
x=2
授業でも、この最後の2行は生徒さんが答えています。「x+3=5」「(xは)2」。ここまで来ると、暗算で言えるくらい軽い計算になっています。
答えをそろえて書きます。
x=2、y=−3
連立方程式の答えは、xとyの2つで1組です。yだけ出したところで手を止めてしまう人がときどきいますが、片方が出た時点ではまだ答えになっていません。y が出たら、そのまま代入までひと息で進めてください。
代入先を③にしたのもポイントです。③は係数が1なので、代入したあとの計算が1行で終わります。①に代入しても同じ答えにはたどり着きますが、13×(−3) のかけ算が1つ増えます。せっかく簡単な式を作ったのだから、最後まで簡単な式を使う。そういう順番です。
板書でも、y=−3 のところから③の式に向かって赤い矢印が引かれていて、その横に「代入」と書かれています。どの式に、どの値を入れるのかを矢印で残しておくと、あとで見直すときに自分の手順をたどり直せます。ノートに書くときも、この矢印はぜひ真似してみてください。
検算: 元の①と②にもどして確かめる
答えが出たら、問題文の式にもどして確かめます。x=2、y=−3 を①に入れます。
11 × 2 − 13 × (−3) = 22 + 39 = 61
①の右辺と同じ61になりました。次は②です。
17 × 2 − 19 × (−3) = 34 + 57 = 91
こちらも②の右辺の91と一致します。2本そろって合ったので、この答えで進められます。
代入するときのコツを1つ。yの値がマイナスのときは、かっこをつけて入れます。−13y のyに −3 をそのまま書くと、−13−3 なのか −13×(−3) なのか、自分でも見分けがつかなくなります。かっこをつけておけば、マイナスとマイナスでプラスになることが目で見えます。
検算は式2本を入れるだけなので、短い時間で済みます。テストの残り時間が少ないときでも、答えを書いたあとに1本だけでも入れてみる価値はあります。合わなければ、そこで初めて見直しを始めればいいからです。
ここで1つ、今回のような工夫をしたときだけ気をつけたいことがあります。検算は、③ではなく元の①と②にもどして行います。③は自分が途中で作った式です。もし②−①のところで符号を1つ落としていたら、まちがった③ができあがり、その③で検算しても気持ちよく一致してしまいます。
自分で作った式ではなく、問題用紙に印刷されている式にもどす。検算の相手を間違えないでください。
よくあるつまずき
つまずき①: 引き算のとき、右辺の符号を変え忘れる
この記事の生徒さんが実際に止まったところです。②−① で、左辺の 11x と −13y はちゃんと −11x、+13y に直せたのに、右辺の61だけ足してしまって 152 にしてしまう。引くと決めたら、その式の全部の項の符号がひっくり返ります。左辺・右辺という区切りは関係ありません。
防ぎ方は、頭の中で引くのをやめて、先に「①の符号を全部反転させた式」を1行書いてしまうことです。授業の板書も、その形で縦に並べていました。
つまずき②: 6で割るとき、割り残しが出る
6x−6y=30 を6で割るとき、左辺だけ割って右辺の30をそのまま残す。あるいは 6x だけ割って −6y を忘れる。割るのは、両辺のすべての項 です。
ここで割り残すと、せっかく作った③の係数が小さくならず、この工夫をした意味がなくなります。割ったあとに「係数が1になったか」を一度見る習慣をつけると気づけます。
つまずき③: マイナスの数をかけたときの符号
−11×③ を作るところです。x−y=5 の −y に −11 をかけて、+11y にする。ここを −11y のまま進めると、yの計算が合わなくなります。授業でおっしーがこの項の符号の理由を言葉にして確認していたのは、それだけ落としやすいからです。
つまずき④: できた③を、どの式と組めばいいか迷う
③は①と②の両方から作った式なので、①と組んでも②と組んでも解けます。授業では「③の式を、例えば①の式を使ってあげるとか」と言って①を選びました。迷ったら、係数の小さいほうと組むと計算が軽くなります。今回なら①(11と13)のほうが②(17と19)より小さいので、①が自然な選択です。
FAQ
Q. この「先に引き算する」やり方は、どんな連立方程式でも使えますか?
A. いつも使う手ではありません。授業でおっしーが言っているのは「基本的に一つの文字を消すっていう方針がベストです」で、そのうえで「ちょっと解きにくい時は、一段階挟んであげるといいことがあります」という順番です。まずは普通に係数をそろえてみて、そこで数が大きくなりそうだと感じたときに思い出す引き出し、という位置づけです。
今回うまくいったのは、17−11 も 19−13 もどちらも6になっていて、引いた式の係数がそろって小さくなったからです。(この見方は筆者の補足で、授業でこの説明はしていません)
Q. ②−① ではなく、①−② でもいいですか?
A. 結果は同じ③になります。①−② をすると 11x−13y=61 から 17x−19y=91 を引くので、−6x+6y=−30 となり、両辺を −6 で割れば x−y=5 です。ただ、符号がマイナスから始まる分だけ、書き間違えの機会は増えます。授業で ②−① を選んだように、引いたあとの先頭がプラスになる向きを選ぶほうが気持ちよく進みます。(①−② の計算は筆者が手元で確かめたもので、授業の板書にはありません)
Q. 工夫せずに力技で解いたら、バツになりますか?
A. この工夫は必須ではありません。授業でも「まあ普通に力技でも解けるんだけど」と言っています。ただ、途中式の書き方や採点のしかたは学校や先生によって違うので、テストでは学校の指示に合わせてください。今回の工夫は、正しい解き方が1つしかないという話ではなく、通る道を選べば途中でつまずく場所を減らせる、という話です。
まとめ
この問題のポイント
- 問題は 11x−13y=61 …① と 17x−19y=91 …②。答えは x=2、y=−3
- 11と17はどちらも素数。xを消そうとすると①を17倍、②を11倍することになり、数が大きくなる
- 基本はステップ1(係数を合わせる)→ ステップ2(どちらかを消す)。今回はその前に一段階はさむ
- ②−① をする。①の符号を全部反転させて 6x−6y=30。右辺は 91−61 で30
- 全部6で割って x−y=5 …③。係数が1の式が手に入る
- ①−11×③ で 11x が消えて −2y=6。両辺を −2 で割って y=−3
- y=−3 を③に代入して x+3=5、x=2
- 検算は元の①と②で。11×2−13×(−3)=61、17×2−19×(−3)=91
今回やったことは、たった1つです。文字を消すという目的を一度わきに置いて、2つの式から簡単な式が出てこないかを先に試した。それだけで、187や221を扱う計算が、11と55の計算に変わりました。係数の大きい連立方程式に出会ったら、まず「引いたら簡単にならないかな」と1回だけ試してみてください。
解き方の手順だけを短く確認したい方は、同じ問題を3ステップの流れだけでまとめた記事もあります。係数が大きいときの進め方を、計算の順番に沿って最短で追える内容です。

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