二等辺三角形の中に線を1本引いて、その長さを求める問題は、中3数学の相似な図形でよく出てくる形です。分かっているのは角度と1辺の長さだけなのに、別の線の長さを聞かれるので、どこから手をつければいいのか迷いやすい問題でもあります。
この記事であつかうのは、授業で先生が生徒と一緒に解いた1問です。生徒は角度を書き込んで、二等辺三角形を見つけるところまでは自分で進めていました。そこから先で止まった生徒の言葉と、それを受けた先生の言葉がこちらです。

これ以降はどうかな

ちょっと分かんなかった

まず1段階目はクリアしてると思います
この記事では、授業と同じ順番で進めます。角度を書き込む、辺の長さをxでそろえる、相似な三角形を見つける、辺の比から二次方程式を立てる、解の公式で解いて正の解を選ぶ、の5つです。
先に動画で確認したい方はこちらからどうぞ。
今回の問題と、授業で生徒が話した考え
今回いっしょに考えるのは、この問題です。
図のように、AB=AC=1、∠BAC=36°の二等辺三角形ABCがある。角Bの二等分線と辺ACの交点をDとし、BD=x とする。このとき、xの値を求めなさい。
授業では、先生がこの問題文を読み上げたあと、「ということで これはどこまで 考えることができましたか」と聞いて、生徒が話す考えを1つずつ確かめていきます。
生徒の考えは、次のところまで進んでいました。
- 「二等辺三角形なんで 底角の角がどっちも72度になって」
- 「二等分線だから その丸のところが36 36になって」
- 「ABDも二等辺三角形になって」「それでADがxになって」
- 「BDCも72度になって」「BCもxになりました」
先生は1つずつ「なるほどなるほど」「OKです」と受けて、「でっかい三角形の中に 二等辺三角形が 2つありましたよ」とまとめています。そのうえで、先生の「これ以降はどうかな」に対する生徒の「ちょっと分かんなかった」に、「まず1段階目はクリアしてると思います」と返しました。理由は「様々な二等辺三角形を見つけていって」、ADがxだと分かっているからです。
つまり、生徒が止まっていたのは、角度と辺の長さが分かったあと、xの式をどう作るかの場面です。角度の問題としては、もうほとんど解けています。
角度から二等辺三角形を見つけるのが1段階目、相似を見つけて式を作るのが2段階目
角度を書き込むと、二等辺三角形が2つ見つかる
先生は手元の図で「じゃあまず条件を整理しましょうか」と言い、「分かってきたことを赤で書くけど」と、角度と長さを図に書き込んでいきました。ここでは、その順番どおりに角度を出していきます。
ステップ1:底角の72°
三角形ABCは AB=AC の二等辺三角形なので、底角の∠ABCと∠ACBは等しくなります。内角の和は180°なので、36°を引いた残りを2つに分けます。先生の言葉では「割る2してあげて72度」。
180°−36°=144°
144°÷2=72°
ステップ2:二等分線で36°ずつ
BDは∠Bの二等分線なので、72°を半分に分けます。
72°÷2=36°
∠ABD=∠DBC=36° です。授業の図では、この2つの角に丸の印がついていて、先生は「36度36度で同じだから」と確かめています。
ステップ3:三角形ABDも二等辺三角形
三角形ABDを見ると、∠A=36°、∠ABD=36° で、2つの角が等しくなっています。2つの角が等しい三角形は二等辺三角形なので、等しい角の向かいにある辺どうし、DAとDBが等しくなります。
ここが生徒の「ABDも二等辺三角形になって」のところです。角度を書き込むだけで、三角形ABCの中にもう1つ二等辺三角形が見えてきました。
二等辺三角形の「2辺が等しいなら底角が等しい」と「2つの角が等しいなら二等辺三角形」は、向きが逆の性質です。この問題では、後ろの「角から辺」の向きを使います。
辺の長さをxでそろえる:AD=x、BC=x、DC=1−x
二等辺三角形が見つかると、辺の長さが次々に分かります。先生は「ここ二等辺三角形だからADもxで」と書き込みました。
AD=BD=x
次は三角形BCDです。∠DBC=36°、∠BCD=72° なので、残りの∠BDCは内角の和から出せます。先生の言葉では「ここ36度だから36度と72度ってことは ここが72度になりますよね」。
180°−36°−72°=72°
∠BDC は三角形ABDの外角と見ることもできて、36°+36°=72° でも同じ答えになります。
三角形BCDは ∠BDC=∠BCD=72° なので、これも二等辺三角形です。72°の角の向かいにある辺どうし、BCとBDが等しくなります。先生は「ここもxになりますよと」。
BC=BD=x
最後にDCです。ここは生徒の考えには出てこなかった長さで、先生が「DCの長さはどうなるかな」と聞いています。ACは1で、そのうちADがxなので、残りがDCです。
DC=AC−AD=1−x
生徒の「1−x」に、先生も「そうそうそう ここは1−xってなるよね」と確かめています。
これで、図の中の長さは 1、x、1−x の3種類だけで表せるようになりました。知りたい長さxを使って、ほかの辺をすべて書きあらわす。これが式を作る準備です。
三角形ABCと三角形BCDは相似な二等辺三角形
ここが授業の2段階目です。先生は「全部二等辺三角形だよね」と言ったあと、こう続けました。
「この三角形ABCと 三角形BCDって これって相似じゃない?」
「相似な二等辺三角形じゃない?」
2つの三角形の角を並べてみます。
| 三角形 | 頂角 | 底角 | 底角 |
|---|---|---|---|
| 三角形ABC | ∠A=36° | ∠ABC=72° | ∠ACB=72° |
| 三角形BCD | ∠DBC=36° | ∠BCD=72° | ∠BDC=72° |
どちらも 36°、72°、72° の三角形です。2組の角がそれぞれ等しいので、三角形ABCと三角形BCDは相似になります。
対応する頂点は、36°の頂点どうし、72°の頂点どうしで決めます。
- A(∠A=36°)と B(∠DBC=36°)
- B(∠ABC=72°)と C(∠BCD=72°)
- C(∠ACB=72°)と D(∠BDC=72°)
だから、対応の順に △ABC∽△BCD と書きます。
先生は「そしたら二つ三角形抜き出して考えていきましょうか」と言い、理由を「図が混みすぎちゃったんで」と話して、三角形ABCと三角形BCDを別々にかき直しました。三角形ABCは AB=1、AC=1、BC=x。三角形BCDは BC=x、BD=x、CD=1−x。板書でも、この2つの三角形を同じ向きで横に並べています。
大きい三角形の中に小さい三角形が入っていると、どの辺とどの辺が対応するのかが見えにくくなります。2つを外に出して同じ向きでかき直すのは、相似の問題で使える工夫です。
辺の比 AB:BC=BC:CD から式を立てる
相似な図形は、対応する辺の比が等しくなります。先生は「辺の比について成り立つよね」と言って、次の比を書きました。
AB:BC=BC:CD
左は三角形ABCの「等しい辺:底辺」、右は三角形BCDの同じ組み合わせです。A→B、B→C、C→D の対応どおりに、ABとBC、BCとCDが対応しています。
ここに長さを入れます。AB=1、BC=x、CD=1−x です。
1:x=x:(1−x)
比の式は、内側どうしのかけ算と外側どうしのかけ算が等しくなります。先生の言葉では「内かける外としてあげると」。
x×x=1×(1−x)
x²=1−x
授業でも「x²=1−x そうね」と、この式を確かめています。
次に、先生は「右側を0っていう感じに してあげて整理する」と続けます。右辺の1と−xを左辺に移項します。
x²+x−1=0
授業では生徒がここを「x²+x=−1」と答えていますが、これは言い間違いです。板書には x²+x−1=0 と書いてあり、この記事でもこちらの式で進めます。
先生は「これっていうの出てきたのはxの二次方程式だよね」。相似の問題を解いていたはずが、最後は二次方程式になりました。中3で習う相似と二次方程式が、1つの問題の中でつながっています。
因数分解できないので、解の公式で解く
先生は「これは因数分解とかできないから 解の公式を使ってあげましょう」と言いました。
x²+x−1 を因数分解するには、かけて−1、たして+1になる2つの整数が要ります。かけて−1になる整数の組は 1と−1 だけで、たすと0です。だから、整数の範囲では因数分解できません。こういうときに使うのが解の公式です。
ax²+bx+c=0 の解は、x=2a分の(−b±√(b²−4ac))
x²+x−1=0 は、a=1、b=1、c=−1 です。
x=2×1分の(−1±√(1²−4×1×(−1)))
x=2分の(−1±√(1+4))
x=2分の(−1±√5)
先生も「マイナス4かける1かける マイナス1」と根号の中を確かめながら、「2分のマイナス1 プラスマイナス√5」とまとめています。
√の中の −4ac は、c=−1 なので −4×1×(−1)=+4 です。マイナスどうしのかけ算でプラスになるところは、符号を落としやすいので、1つずつ書いて確かめます。
二次方程式の解き方には、因数分解、平方根の考え、解の公式の3通りがあります。同じ式を3通りで解いて、どの場面でどの解き方を選ぶかを比べた記事があります。因数分解できないときに解の公式へ切りかえる判断を、あらためて確かめたいときに読んでみてください。

xは辺の長さなので、正の解を選ぶ
解の公式から、xの値が2つ出てきました。
x=2分の(−1+√5)、2分の(−1−√5)
先生は「そしたらこれでプラスマイナス出てきたけれども」と言って、問題の図に戻ります。「今xっていうのはこの辺の長さだよね」「辺の長さっていうことはxはプラスかなマイナスかな?」。答えは「プラス」です。
√5は2より大きく3より小さい数です(2²=4、3²=9)。だから、2つの解の符号は次のように分かれます。
- 2分の(−1+√5) は、分子が正なので正の数
- 2分の(−1−√5) は、分子が負なので負の数
長さが負になることはないので、先生の言うとおり「プラスの方が残りますよ」。
x=2分の(−1+√5)
√5を前に書いて並べかえます。
答え:x=2分の(√5−1)
授業では「2分の√5−1になると思います」という言い方で、先生も「そうねOK」と答えを確かめています。耳で聞くと「2分の√5」から1を引くようにも聞こえますが、分子が √5−1 で、それを2で割った数です。(√5−1)÷2 と書くこともできます。
√5≒2.236 で計算すると、x≒0.618 です。ABやACの長さ1より短く、図の見た目とも合っています。
授業の最後、先生の「ここまでの解説でどこか 分からなかったところとかありますか?」には、生徒の返事として「大丈夫です」。1段階目で止まっていたところから、相似、辺の比、二次方程式、解の公式と、1つずつつないで答えまでたどり着きました。
答えの検算:x²と1−xが一致するか確かめる
ここからは授業では扱っていない補足ですが、答えが出たら、つじつまが合っているかを確かめておきましょう。
確かめ1:x²=1−x を満たすか
x=2分の(√5−1) を2乗します。
x²=4分の(√5−1)²
=4分の(5−2√5+1)
=4分の(6−2√5)
=2分の(3−√5)
1−x も計算します。
1−x=2分の2−2分の(√5−1)=2分の(3−√5)
どちらも 2分の(3−√5) になり、一致しました。
確かめ2:小数で比べる
x≒0.618
x²≒0.382
1−x≒0.382
小数で見ても、x²と1−xは同じ値になります。
確かめ3:点Dが辺ACの上にあるか
DC=1−x≒0.382
DCが正の長さになるので、点Dは辺ACの上、AとCの間にあります。ADがx≒0.618、DCが≒0.382で、たすとACの1になります。
もし負の解の 2分の(−1−√5)≒−1.618 をxに入れると、長さが負になるうえ、DC=1−x≒2.618 で、ACの1より長くなってしまいます。図に合わないことからも、正の解を選ぶ理由が確かめられます。
よくあるつまずき
ここも授業では扱っていない補足をふくみますが、この問題で手が止まりやすい場所をまとめておきます。
- 角度は出せたのに、そこで止まる。授業で紹介した生徒の考えも、ここで「ちょっと分かんなかった」でした。辺の長さをxと1−xで書きあらわせたら、同じ形の三角形を探します
- DCの長さを出し忘れる。比の式に使うのはCDです。AC=1からAD=xを引いて、1−x と図に書いておきます
- 相似の対応をまちがえる。三角形ABCと三角形BCDは、36°の頂点どうし、72°の頂点どうしが対応します。A→B、B→C、C→D の順をくずすと、比の式が変わってしまいます
- 比を 1:x=(1−x):x のように組み合わせてしまう。対応する辺どうしで比を作ると、AB:BC=BC:CD です
- x²=1−x の移項で符号を逆にする。右辺の −x を左辺に移すと +x、1を移すと −1 で、x²+x−1=0 です
- 解の公式の√の中で、−4ac の符号を落とす。c=−1 なので −4×1×(−1)=+4、√の中は 1+4=5 です
- 負の解を答えに残す。xは辺の長さなので、正の解だけが答えです
どれも、計算の力よりも、図のどの辺の話なのか、符号は何か、という確認がぬけることで起きやすいつまずきです。式を立てる前に、図に長さを全部書き込んでおくと、比の式で迷いにくくなります。
よくある質問
ここは授業では扱っていない補足です。
Q. なぜ36°と72°だと、相似な三角形が出てくるのですか?
A. 底角の72°を半分にすると、ちょうど頂角と同じ36°になるからです。底角の二等分線を引くと、切り取られた三角形BCDも 36°、72°、72° になり、もとの三角形ABCと同じ形になります。頂角が36°ではない二等辺三角形で底角の二等分線を引いても、こうはなりません。
Q. 36°、72°、72°の二等辺三角形には名前がありますか?
A. 「黄金三角形」と呼ばれることがあります。今回の三角形ABCでは、等しい2辺が1、底辺BCがxでした。等しい辺と底辺の比を計算してみます。
1÷x=2÷(√5−1)
=2(√5+1)÷4
=2分の(1+√5)≒1.618
この 2分の(1+√5) は「黄金比」と呼ばれる数です。教科書の範囲をこえる話ですが、相似の問題で36°と72°が出てきたら、この形を思い出すと見通しが立ちやすくなります。
Q. 解の公式には、bが偶数のときの形もあると聞きました。今回は使えますか?
A. 今回は使えません。bが偶数のときは、b=2b′ とおいた形の公式を使うと計算が軽くなります。x²+x−1=0 は b=1 で奇数なので、ふつうの解の公式を使います。bが偶数のときの公式と、その使いどころを解説した記事があります。

まとめ
今回の問題は、相似な図形と二次方程式を組み合わせた1問でした。∠A=36°の二等辺三角形で、底角は72°。BDで二等分すると36°ずつになり、三角形ABDと三角形BCDの2つの二等辺三角形が見つかります。そこから AD=x、BC=x、DC=1−x と、辺の長さをxでそろえました。
次に、三角形ABCと三角形BCDが 36°、72°、72° の相似な二等辺三角形だと気づくと、AB:BC=BC:CD から 1:x=x:(1−x) が立ちます。内かける外で x²=1−x、整理して x²+x−1=0。因数分解できないので解の公式を使い、xは辺の長さなので正の解を選んで、x=2分の(√5−1) でした。
授業で生徒が話した考えは、角度から二等辺三角形を見つける1段階目までは進んでいました。そこに「相似じゃない?」という見方を1つ足すと、式が立ちます。角度と長さを書き込んだら、同じ形の三角形がないか探してみてください。
この問題のポイント
- 二等辺三角形の底角は (180°−頂角)÷2。今回は72°
- 2つの角が等しい三角形は二等辺三角形。三角形ABDも三角形BCDも二等辺三角形
- 知りたい長さをxとおき、AD=x、BC=x、DC=1−x と辺の長さをそろえる
- 2組の角が等しいので、三角形ABCと三角形BCDは相似。対応はA→B、B→C、C→D
- 辺の比 1:x=x:(1−x) を内かける外で x²=1−x、整理して x²+x−1=0
- 因数分解できないので解の公式。xは辺の長さなので正の解 x=2分の(√5−1)
角度は出せたのに、そこから先の式が立たない。相似な三角形がどこにあるのか見つけられない。そんなつまずきは、Laf先生の公式LINEから気軽に質問してください。オンライン学習塾Lafでは、無料のオンライン授業も開催しています。わからないところを、一緒に1つずつわかるようにしていきましょう。
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