一次関数の最短距離の問題には、x軸の上の点を1つだけ通るものと、x軸とy軸の両方を通るものがあります。今回あつかうのは後者です。点Pを出発してy軸にぶつかり、次にx軸にぶつかってから点Qへ行く。この折れ線がいちばん短くなるのは、y軸とx軸のどこを通るときかを考えます。
この記事は、授業で先生と生徒が一緒に解いた1問をもとにしています。先生は問題を読み終えると、まず難しさを認めてから、前に解いた問題のおさらいに入りました。

これは難しいね。じゃあおさらいねもう一回。最短距離は直線って何回も言ってると思います(中略)ここの最短距離で結んであげるっていうのが解き方だよね

はい
この記事では、点が1つのときと2つのときで何が変わるのかを確かめてから、2つの点を折り返し、折り返した点どうしを直線で結んで式を求め、y軸とx軸との交わり方から座標を出すところまで、授業と同じ順番で進めます。
先に動画で確認したい方はこちらからどうぞ。
今回の問題と、授業の始まり
今回いっしょに考えるのは、この問題です。
> 図のように、2点P(2, 3)、Q(3, 2)が与えられている。y軸上に点A、x軸上に点Bをとり、折れ線PABQの長さが最小となるようにするには、点A、Bをどこにとればよいか。
図は文章で説明しておきます。座標平面の右上、x座標もy座標も正の場所に、P(2, 3)とQ(3, 2)の2つの点があります。点Aはy軸の上、点Bはx軸の上のどこかにあり、P→A→B→Qの順に点線で結んだ折れ線がかかれています。PはQより左上、QはPより右下です。
先生は問題を読むとき、動きを言葉でなぞっていました。「でこれ一旦Pから出発して」「AにぶつかってBにぶつかってからQに」「行くって言った時の」「この距離が最小となるような」。つまり、Pから出て、まずy軸に、次にx軸に立ち寄ってからQに着く道のりです。その道のりの長さが最小になるときの、AとBの位置を答えます。
続けて先生は「なるほど最短距離になる問題ですねこれも」と言い、「これは難しいね」とひと言そえています。
何が難しいのかを先に整理しておくと、AもBも、どこにとるかはまだ決まっていません。y軸の上ならAはどこでもよく、x軸の上ならBはどこでもよいのです。2つの点を同時に動かしながら最小を探すのは、頭の中だけでは追いきれません。
そこで今回も、最短距離の問題で使ういつもの考え方を土台にします。点を軸について折り返して、曲がった道のりを1本のまっすぐな線に直すやり方です。ただし今回は、折り返し方に1つだけ工夫が要ります。その工夫が何なのかを、次の節で見ていきます。
つまずきの正体:経由する点が2つになると、折り返す点も2つ要る
おさらいのあと、先生は今回の問題のねらいをこうまとめています。「要は本質はPとQを直線で結べるような」「線対称の点を取るっていうだけなんですけれど」。そして生徒に「どうしたらいいと思う?」と問いかけました。
ここで先生が比べたのが、経由する点が1つの場合です。「これBだけだったら」「Qだけ線対称にすればよかったんだよね」。もしx軸の上の点Bだけを通ってPからQへ行くのなら、Qをx軸について折り返すだけで、PとQの間の道のりはまっすぐな線に直せます。点を1つ折り返せば、曲がり角も1つ消えるからです。
ところが今回は、道のりの曲がり角が2つあります。y軸の上のAと、x軸の上のBです。先生も「なんだけれど今回2点取らないといけないから」と続けています。
Qだけを折り返した場合を考えてみます。すると道のりはP→A→B→Q’になり、Bでの曲がり角は消えます。けれども、Aでの曲がり角は残ったままです。PからAへ行ってy軸で向きを変える部分が、まだまっすぐになっていません。
つまり、1つ折り返しただけでは足りないのです。経由する点が2つなら、折り返す点も2つ要る。今回の問題で手が止まりやすいのは、点が1つのときのやり方のまま、Qだけを折り返して先へ進もうとするところです。
では、どの点をどの軸で折り返せばいいのか。Qはx軸の上のBとつながっているので、x軸で折り返します。Pはy軸の上のAとつながっているので、y軸で折り返します。それぞれの点を、すぐとなりで立ち寄る軸について折り返す、という組み合わせです。授業の中で、この答えにたどり着くまでのやり取りを次の節で追います。
ステップ1・2:最短距離は直線のおさらいと、QとPの折り返し
ステップ1:最短距離は直線、を思い出す
先生がおさらいしたのは、前に解いた形の問題です。「グラフにあるやつでAがあってBがあって」「で点Pがあってみたいなやつがあって」「これさっきも解いたけれど」。2点AとBがあり、軸の上の点Pを通ってAからBへ行く道のりを最短にする問題です。
このときの解き方を、先生は「ここのB’逆側をとって」「ここの最短距離で結んであげるっていうのが解き方だよね」と説明しています。Bを軸について線対称に移した点B’をとると、PBとPB’の長さは等しくなります。だから道のりAP+PBは、AP+PB’に置きかえられます。あとはAからB’までを直線で結べば、それが最短です。
先生のまとめは「線対称でとって直線を結ぶ」「直線だと最短距離だからっていうのは」「もう何回もやってると思います」。そして「これを今回の問題にも生かすんです」と、今回の問題へつなげました。
x軸の上の点を1つだけ通る形の最短経路は、別の記事でくわしく解いています。点Bをx軸について対称に移し、直線AB’とx軸の交点から点Pを求める手順です。今回の問題の土台になる1問です。

ステップ2:Qをx軸について、Pをy軸について折り返す
まずはいつもと同じ一手からです。先生は「これねまずいつも通りQを線対称とってみようか」と言い、Qをx軸について折り返した点Q’をとりました。
Q(3, 2)はx軸から上に2の場所にあります。先生は「ここが距離がy軸の座標2だから」「ここも2になって」と説明しています。x軸の下側にも同じ2だけとるので、Q’の座標は(3, −2)です。x座標はそのままで、y座標の符号だけが変わります。生徒も「OKです」と返しています。
次がPです。先生は生徒にこう問いかけました。

Pもこっちにあったらいいんじゃねって発想になりません?

あーそうですね
先生は続けて「そうy軸に対して線対称とってやればいいんだこれ」。P(2, 3)をy軸について折り返すと、今度はy座標はそのままで、x座標の符号だけが変わります。P’の座標は(−2, 3)です。
先生はこの作業を「2段階で構えればいいんで」と言っています。1段目でQをx軸について、2段目でPをy軸について折り返す。Qはx軸、Pはy軸と、折り返す軸がちがうところが、今回の問題の大事な点です。
x軸やy軸についての対称移動は、一次関数の対称移動の記事でも図で整理しています。直線をx軸・y軸・原点について対称移動した式の求め方を解説しているので、折り返しの感覚をつかみ直したいときに読んでみてください。

ステップ3:P’からQ’まで直線を引く
折り返した2つの点がそろったら、道のりの長さを書き換えます。
先生はまずAのほうから確かめました。「ここのAからPまでの距離と」「AからP’までの距離って一緒じゃね?」。生徒は「一緒ですね」と答えています。続けてBのほうも「BからQまでの距離と」「BからQ’の距離も一緒でしょ?」と確かめ、生徒は「はい」と返しました。
求めたいのは「PA+AB+BQの長さ」が最小になるときです。そこでPAをP’Aに、BQをBQ’に置きかえ、ABはそのまま残します。
PA+AB+BQ=P’A+AB+BQ’
右側の道のりについて、先生は「そしたらP’からA行ってAからB行ってBからQ’に行くっていう距離の」「最短距離を求めるってことは」「ここからここまでの最短距離を求めればいいから」と続けています。
この道のりが最短になるのは、1本の直線になるときです。先生は「まっすぐ直線引いてあげると」「この距離を求めればいいんじゃないか?」と言い、「P’からQ’までの長さってことにならない?」とまとめました。P’・A・B・Q’が一直線に並んだときが最短です。
だから、AとBの場所も決まります。先生の言葉では「直線だから最短距離は」「だからここがAでここがBにならないといけないんだ」。直線P’Q’がy軸と交わる点がA、x軸と交わる点がBです。先生の「理解できた?」に、生徒は「理解できました」と答えています。
ここは授業では扱っていない補足です。PA=P’Aになる理由です。PとP’はy軸をはさんで反対側にあり、線分PP’はy軸と垂直に交わって、その交点が線分PP’の真ん中になります。つまりy軸は線分PP’の垂直二等分線です。垂直二等分線の上の点は線分の両はしから等しい距離にあるので、AからPまでとP’までの距離は等しくなります。BQ=BQ’も、x軸が線分QQ’の垂直二等分線だからです。
ステップ4・5:直線P’Q’の式を求めて、AとBの座標を出す
ステップ4:直線P’Q’の式を求める
先生が「ってことはこの直線の方程式はどうやって求めればいい?」と聞くと、生徒は「y=ax+bに」「2個入れて連立して」と答えました。先生も「そうですね」と受け、「2点の座標を入れて連立方程式でもいいし」「傾きを求めるでもいいよね」と、どちらのやり方でもよいと伝えています。授業では、傾きを先に求めるやり方で進めました。
P'(−2, 3)からQ'(3, −2)へ進むとき、xは−2から3まで増えます。先生は「−2から3までいってるから」「xの増加量は+5ですと」。yは3から−2まで変わるので、yの増加量は−5です。
xの増加量=3−(−2)=5
yの増加量=−2−3=−5
傾きは、xの増加量分のyの増加量です。
傾き=−5÷5=−1
先生も「5分の−5で傾きは−1ってなるね」「だからy=−x+bとなります」と進めています。
次に、bを求めます。先生は「ここにじゃあQ’の座標を代入してあげると」と、Q'(3, −2)を式に入れました。yが−2、xが3なので、
−2=−3+b
b=1
直線P’Q’の式は、次のようになります。
y=−x+1
ステップ5:y軸との交点がA、x軸との交点がB
Aはy軸の上にあるので、x座標は0です。直線とy軸の交点のy座標は、式の切片そのものです。先生は「ってことはこの切片bが1だから」と言い、Aの座標を(0, 1)と出しました。先生の「合ってるかな」に、生徒は「はい、合ってます」と答えています。
Bはx軸の上にあるので、y座標は0です。先生は「ここにyの座標が0の時を考えるから」と、y=−x+1にy=0を代入しました。
0=−x+1
x=1
Bの座標は(1, 0)です。先生の「合ってるでしょうか」に、生徒は「合ってます」と返しています。Aは切片で読み、Bはy=0を代入して求める。
答えと検算
ここまでの結果をまとめます。
答え:点Aを(0, 1)、点Bを(1, 0)にとる
折れ線PABQの長さが最小になるのは、y軸の上のA(0, 1)と、x軸の上のB(1, 0)を通るときです。
答えが正しいかを、折り返した点からもう一度確かめておきます。最短になるのは、P’・A・B・Q’の4つの点が一直線に並ぶときでした。そこで、となり合う点どうしの傾きがすべて同じかを見ます。
P'(−2, 3)からA(0, 1):xは+2、yは−2なので傾きは−1
A(0, 1)からB(1, 0):xは+1、yは−1なので傾きは−1
B(1, 0)からQ'(3, −2):xは+2、yは−2なので傾きは−1
3つとも傾きは−1で、直線y=−x+1の傾きと一致します。4つの点は1本の直線の上に並んでいるので、答えの座標は筋が通っています。
もう1つ、Aがy軸の上、Bがx軸の上にあることも確かめます。A(0, 1)はx座標が0なのでy軸の上、B(1, 0)はy座標が0なのでx軸の上です。問題の条件どおりになっています。
なお、答えるのは折り返した点P’やQ’ではなく、AとBの座標です。P’とQ’は、最短の道のりを見つけるために作った補助の点です。答えを書く前に、問題が何を聞いているかをもう一度読み直してください。
よくあるつまずき
授業の中で出てきた言葉をもとに、この問題で手が止まりやすいところをまとめます。
- Qだけを折り返して先へ進んでしまう。点が1つの問題に慣れていると、いつもの一手で終わりにしたくなります。先生も「これBだけだったら」「Qだけ線対称にすればよかったんだよね」と、1つの場合との違いを示していました。曲がり角がいくつあるかを数え、その数だけ点を折り返してください
- 折り返す軸を取り違える。Pをx軸で、Qをy軸で折り返してしまうと、道のりはまっすぐになりません。Pの次に立ち寄るのはy軸の上のA、Qの手前で立ち寄るのはx軸の上のBです。点がとなりで立ち寄る軸について折り返します
- 増加量の符号をまちがえる。P'(−2, 3)からQ'(3, −2)へ進むとき、先生は「−2から3までいってるから」xの増加量は+5、「yの増加量は3から−2までいってるから」−5と、どこからどこへ進むかを声に出して確かめていました。xとyで出発点をそろえないと、傾きの符号がずれます
- AとBの出し方を逆にしてしまう。Aはy軸の上なのでx=0、Bはx軸の上なのでy=0です。y軸との交点は切片で読めますが、x軸との交点は式にy=0を入れて求めます。どちらの軸との交点かを先に決めてから計算してください
もう1つ気をつけたいのが、折り返した点の座標を出すところです。点を折り返したら、その座標を図の上に書きこんでから次へ進みましょう。授業でも先生は、Q’の座標を出したところで「OK?」と生徒に確かめてから、Pの折り返しへ進んでいました。図に座標を書いておけば、傾きを求めるときに読み間違えにくくなります。
よくある質問
ここは授業では扱っていない補足をふくみます。
Q. 連立方程式で直線の式を求めるときは、どうなりますか?
A. 授業で生徒が最初に答えたのは、こちらのやり方でした。y=ax+bにP'(−2, 3)とQ'(3, −2)を入れます。
3=−2a+b
−2=3a+b
下の式から上の式を引くと、
−5=5a
a=−1
これを上の式に入れると、3=2+bなのでb=1です。傾きを先に求めたときと同じく、y=−x+1になります。
Q. 折れ線の長さの最小値はいくつになりますか?
A. 問題で聞かれているのはAとBの位置ですが、最小の長さはP’Q’の長さと同じです。P’からQ’までは、横に5、たてに5進んでいます。三平方の定理(中3で習います)を使うと、
P’Q’=√(5²+5²)=5√2
となります。中2の段階では、長さがP’からQ’までの直線の長さに置きかわる、というところまでつかめていれば十分です。
Q. PとQを折り返す順番は、逆でもいいですか?
A. かまいません。授業ではQを先に折り返しましたが、Pを先にy軸で折り返しても、できるP’とQ’は同じです。大事なのは順番ではなく、どの点をどの軸で折り返すかの組み合わせです。
まとめ
x軸とy軸の両方を経由する一次関数の最短距離の問題は、点が1つの問題と同じ考え方の延長にあります。最短距離は直線。だから、曲がった道のりを折り返しでまっすぐに直します。ちがうのは、曲がり角が2つあるので、折り返す点も2つ要るところです。
今回の問題では、Qをx軸についてQ'(3, −2)に、Pをy軸についてP'(−2, 3)に折り返しました。折れ線PABQの長さはP’からQ’までの道のりに置きかわり、直線y=−x+1とy軸・x軸との交点からAとBが決まりました。
先生が問題を読んだ直後に「これは難しいね」と言ったように、初めて見ると手が止まりやすい問題です。それでも、1つずつ折り返して直線で結ぶ、という手順は点が1つのときと変わりません。授業のやり取りを思い出しながら、もう一度自分の手で図をかいてみてください。
この問題のポイント
- 最短距離は直線。折り返して、曲がった道のりをまっすぐな線に直す
- 経由する点が2つなら、折り返す点も2つ。Qはx軸について、Pはy軸について折り返す
- PA=P’A、BQ=BQ’なので、PA+AB+BQ=P’A+AB+BQ’
- P’とQ’を結ぶ直線の式を求める(傾きからでも、連立方程式からでもよい)
- Aはy軸との交点なので切片、Bはx軸との交点なのでy=0を代入して求める
一次関数の最短距離で、どの点をどの軸で折り返せばいいのか分からなくなった。直線の式は出せたのに、座標の読み方で迷った。そんなつまずきは、Laf先生の公式LINEから気軽に質問してください。オンライン学習塾Lafでは、無料のオンライン授業も開催しています。「わからない」を「わかった!」に、一緒に変えていきましょう。
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